紅楼夢アイテム事典

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その1] [その2]
(6)お茶
仙紅一窟(せんこういっくつ・第5回)
 宝玉が太虚幻境でふるまわれた「香ばしく得もいわれぬ味わい」のお茶。警幻仙姑の説明によれば放春巌(ほうしゅんがん)の遣香洞で採れる茶葉を仙花霊葉に結んだ朝露で煮たもの。脂批には「窟は哭と音が通じる」とあります。

楓露茶(ふうろちゃ・第8回)
宝玉が「あの茶は三、四度入れたあとでないと、ほんとうの味はでない」と言っています。「紅楼夢大辞典」によれば、楓の若葉を蒸して採った滴で入れたお茶とのことです。

六安茶(りくあんちゃ・第41回)
 安徽省霍山県の銘茶。霍山が過去六安郡に属していたのでこの名があります。櫳翠庵で妙玉に茶をふるまわれた史太君が「わしは六安茶はいただきませんよ」と言っています。

老君眉(ろうくんび・第41回)
 湖南省岳陽市洞庭湖の君山で生産される黄茶。茶葉が老人の眉のごとく長いことから老君眉と名付けられましたが、現在は君山銀針(くんざんぎんしん)と呼ばれ、値段が非常に高く入手が難しいお茶です。上のくだりを受けて妙玉が「これは老君眉でございます」と言っています。

杏仁茶(あんにんちゃ・第54回)
 元宵節の夜宴の時に、史太君がのどの渇きを覚えますが、さっぱりしたものがなかったので、煕鳳が杏仁茶を勧めています。脂批によれば小麦粉と杏仁粉を一緒に煮込んだだけの飲料です。現在の杏仁茶はもう少し手を加えていますが、いずれにせよ、お茶というよりは杏仁ミルクといった感じの飲み物です。

普洱茶(ぷーあるちゃ・第63回)
 雲南省普洱府が原産地とされる黒茶。脂肪分解作用があり、漢方薬としても飲用されます。怡紅院に見回りに来た林之孝の妻が、襲人に「(宝玉に)普洱茶を少し入れて差しあげたら」と言っています。
 女児茶(第63回)
 宝玉が普洱茶の名前を嫌って女児茶と付け替えたもので、これを聞いた林之孝の妻から苦言を聞かされます。

龍井茶(ろんじんちゃ・第82回)
 南宋の首都だった杭州周辺で古くから作られている中国を代表する緑茶で、西湖の西にある龍井村で生産されたことからこの名があります。

(7)お酒
万艶同杯(ばんえんどうはい・第5回)
 宝玉が太虚幻境でふるまわれた「とても世の常のものとは思われない」お酒。警幻仙姑の説明によれば、百花の蕊と万木の汁と麒麟の髄の醅(もろみ)と鳳凰の乳の麹を合わせて作ったもの。脂批には「杯は悲と音が通じる」とあります。

恵泉酒(けいせんしゅ・第16・62回)
 第16回では賈璉の乳母の趙婆さんに煕鳳が恵泉酒を勧めています。第62回では芳官が、家にいた時分には上等の恵泉酒を飲んでいたのに、芸を稽古するようになってからは声が悪くなるからといわれて飲めなくなったと愚痴っています。江蘇省無錫県の西郊にある恵山の泉が「天下第二泉」と呼ばれており、その水で造った甘口の黄酒。

黄酒(第31回)
 襲人の脇腹を蹴り上げてしまった宝玉が、治療薬の調合のために温めさせました。黄酒は米を原料とする醸造酒で、長江南部が主な生産地なので、北京など北方ではあまり飲むことがなかったそうです。黄酒を長期熟成させたものを老酒(ラオチュウ)と呼びます。
 紹興酒(しょうこうしゅ・第63回)
 浙江省紹興市付近で作られている代表的な黄酒。宝玉誕生祝いの夜宴で襲人が「上等の紹興酒を一甕」用意していました。

合歓花酒(ねむのはなのさけ・第38回)
 第2回詩会の時に「胸がチクチク痛む」ので焼酎が欲しいと言う黛玉のために、宝玉が合歓(ねむ)の花を浸した焼酎を温めさせました。

西洋葡萄酒(せいようのぶどうしゅ・第60回)
 芳官が玫瑰清露を五児に届けた時、柳母子は葡萄酒だろうと思っています。宝玉は時折飲むことがあったようです。

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