紅楼夢名場面集


(5)第41~50回
妙玉、櫳翠庵で茶をふるまう(第41回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

一行は劉婆さんと連れ立って櫳翠庵にやってきました。妙玉の立てた老君眉を史太君から渡された劉婆さんは、一口で飲み干して「少し薄いようですな。もう一度煮て濃くしたらもっと結構でしょう」と言って笑いを誘います。
妙玉が宝釵と黛玉を耳房に招いたのを見た宝玉は、笑いながら「自分たちだけでとっておきのを飲んでいますね」と言って仲間に加わります。道婆が人々に出した茶碗を下げてくると妙玉は「その成窰(せいよう)の茶碗は外に置いておおき」と言いつけます。「劉婆さんが飲んだので、きたながって要らないといいんだな」と察する宝玉。
去り際に宝玉は、その茶碗を劉婆さんにくれてやったら、と妙玉に提案します。

劉婆さん、宝玉の寝室で泥酔す(第41回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

酒を過ごしてトイレにいった劉婆さん、いつまでたっても帰ってきません。板児はおばばがいなくなったと言ってわあわあ泣き出します。

探しに出た襲人が怡紅院へ入ると、ものすごい酒の匂いと雷のようないびきが聞こえてきます。見れば劉婆さんが手足を投げ出し、寝台の上にでんとひっくり返っているではありませんか。度肝を抜かれた襲人、慌てて劉婆さんを起こしました。

黛玉、宝釵に心服する(第42・45回)

宝釵は黛玉を蘅蕪苑に連れていき、尋問しました。「昨日の酒令の席でおっしゃった句はどこから出てきたのです?」
言われて黛玉、うっかり「牡丹亭」と「西廂記」の句を引いてしまったことを思い出し、恥じて詫びを入れます。宝釵は「むやみと雑書に染まって性根を悪くしては終わりですよ」と黛玉に諭しました。

…やがて秋分を過ぎ、また咳き込み始めた黛玉を宝釵が見舞いに上がりました。「処方箋を拝見しました。まず肝臓を落ち着かせ、胃を丈夫にすることが肝要。毎朝海燕の巣を粥にしてお食べなさい」と言う宝釵。

黛玉はため息をついて言いました。「私はあなたを腹黒い方だと思いこんでおりました。私の誤解だったのですね。先日のご忠告、今回のお話を聞いてほとほとあなたに感じ入りました」。

宝玉、金釧児を祀る(第43回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

9月2日は熙鳳の誕生日。詩社としての正規の初顔合わせの日でもあるのに、宝玉は朝から出かけてしまったと聞かされます。「今日はどんな御用があっても、外出などなさるべきではないのに」となじる李紈。

その日の早朝、「北静王の屋敷へ伺う」と言って、宝玉は喪服を着て馬に飛び乗り、茗烟一人を共に駆け出しました。二人は一直線に北門を抜け、水月庵を訪れます。祭祀の用具を借りると、宝玉は香を焚いて半礼を済ませました。実はこの日は、亡くなった金釧児の誕生日でした。

熙鳳・平児と賈璉の大げんか(第44回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

誕生祝いの宴で酒を過ごした熙鳳は、帰宅して一休みしようと席をはずしました。ところが穿廊まで来ると、彼女を見た侍女見習が逃げていこうとします。不審に思った熙鳳、引っ捕らえて脅しをかけると侍女見習は全てを白状します。なんと、賈璉が鮑二の女房を連れ込み、見張りに立たされていたとのこと。

熙鳳が中を伺うと、女と賈璉の話す声がします。「あの女房さん(熙鳳)がくたばったら、平児さんを本妻にされては?」「平児だって不満でいっぱいなのさ」。激怒した熙鳳、さては平児もグルか、と平児を2,3発ひっぱたき、ドアを蹴って踏み込みます。熙鳳は女に殴りかかり、またも平児に向かって平手打ち。怒った平児が女を殴り始めたのを見て、逆ギレした賈璉は平児を足蹴にします。思いあまって小刀で自害しようとする平児。

熙鳳は史太君のところへ逃げ込みます。そこへ剣を持って追いかけてきた賈璉を見て、史太君は大激怒!

賈赦、鴛鴦を妾に望む(第46・47回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

賈赦は鴛鴦を妾として部屋に入れたいと言い出し、邢夫人が鴛鴦を説得に来ました。鴛鴦はだんまりを決め込みます。

その後、ついに賈赦に脅し文句まで並べられた鴛鴦は、最終手段に出ます。史太君の前に進み出て跪きました。

「私どうあっても人には嫁ぎません。ご隠居様が西方浄土にまかられる日には、自害して果てるか、髪をおろして尼になるつもりです」。涙ながらにそう言うと左手で髪をさばき、右手でハサミを入れました。史太君はまたも大激怒!

柳湘蓮、薛蟠に鉄拳を見舞う(第47回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

頼尚栄(家人・頼大の息子)が知県になった祝宴で、薛蟠は柳湘蓮に会います。薛蟠に役者ずれのように呼ばれるのにカチンときた湘蓮、にこやかに彼に向かっていいました。「ご一緒に宿へ行き、さしで一晩飲み明かしませんか?」

喜んだ薛蟠、早速馬を走らせて待合せの北門橋へ向かいます。ところが待っていたのは湘蓮の鉄拳制裁でした。「柳の旦那をどなたと心得る! 失礼なことをぬかしおって!」と力一杯殴りつける湘蓮の拳に、ヒーヒー言って転げ回る薛蟠。

これより湘蓮は行方をくらまし、薛蟠は恥じて旅に出ました。

香菱、詩づくりに熱中する(第48・49回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

薛蟠が旅に出てしまったのを受けて、香菱は宝釵について大観園に入りました。彼女はさっそく黛玉に詩の作り方を教わりに行きます。諸事そっちのけで、朝から晩まで詩の推敲ばかりしている香菱に宝釵も呆れて笑っていました。

そこへ叔父の転出に伴って史湘雲が大観園に移ってきます。香菱が詩の講釈をお願いしたものだから、湘雲は調子に乗って朝から晩までしゃべりまくり、これには宝釵も「やかましくてたまらないわ!」

宝琴・李姉妹・岫烟ら大観園に入る(第49回)

大勢の親族が栄国邸にやってきました。というのも邢岫烟は母と共に邢夫人を頼って上京、王仁(熙鳳の兄)は家族を連れて上京、李姉妹は母と共に上京、薛蝌が妹の宝琴を嫁がせるために上京、という具合で偶然皆落ち合ってきたのでした。

新しい姉妹たちの美しさに呆けている宝玉を尻目に、晴雯は早速見て戻り、クックと笑いながら言いました。「上の奥方様の姪御様、宝釵様の妹御様、上の若奥様の二人の妹御様、それこそ4本のネギみたい」

湘雲と宝玉、鹿の肉を焼く(第49回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

久々に詩会が開かれる日、湘雲は宝玉に、鹿の肉を園にもらって行って自分たちで焼くことを提案します。煕鳳の使いで来た平児をつかまえ、三人で火を囲んで炙って食べる様子を珍しがって見ている宝琴。

「ちょっと食べてご覧なさいよ」と呼びかける湘雲に、最初は「きたならしいわ」と躊躇する宝琴でしたが、宝釵にも勧められて一口食べてみると、その美味しさに目を見張ります。

そこへ煕鳳までがやってきて輪に加わったのを見た黛玉は「この乞食の群れはどこからかり集めたのかしら。蘆雪庵も今日は雲ちゃんのおかげで汚されてしまったわ」と笑います。


(6)第51~60回

晴雯、雀金裘を繕う(第52・53回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

宝玉は史太君にもらった雀金裘に焦げ穴をつくってしまいました。仕立屋に出しても原料が分からない、と引き受けてもらえません。

折から襲人は母が危篤で宿下がり中。晴雯は風邪で伏せっていましたが、これを聞いて「孔雀の金糸で界線式に織ればごまかせるかもしれませんわ」。

しかし見渡すと、晴雯にしか修繕出来そうにありません。頭は重く、めまいもしますが、渾身の力を出して繕いあげます。修繕を終えた瞬間、「アアッ」と声をあげて倒れ込みました。

探春、家政を切り回す(第55・56回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

熙鳳が寝込んでしまったため、探春・李紈・宝釵の三人が家政を執ることになりました。彼女らを小馬鹿にして怠けてやろうとした家人の妻女たちでしたが、その裁量が行き届き、また呉新登の女房が探春にやりこめられるのを見て舌を巻きます。熙鳳の頃よりよほど厳しくなったと噂しあいました。

ところがその日、趙氏が探春のもとへ押しかけてきます。鼻水垂らして泣きながら「姫様までが私の頭をふみつけになさるとは!」と訴えます。実は趙氏の弟が死んだことで、探春が銀子に色をつけてくれないことに怒鳴り込んだのでした。

その後、探春や宝釵の献策で、大観園内のめいめいの受持ちが決まり、余分な経費は節減され、家政はテキパキと執り行われていきます。

宝玉、夢で甄宝玉に会う(第56回)

宝玉は史太君から甄家にも宝玉という少年がいて、同じ顔・同じ気性をしているとの話を聞かされて気になっていました。

部屋へ戻ってうとうとしていた宝玉、いつしか見知らぬ庭園に来ていました。侍女たちに声をかけたところ、「あんた、どこから着たのよ。臭いったらないわ(ひどすぎる…)」とのすげない応対。とぼとぼと歩いていると、部屋の中に誰やら寝そべっている様子。その少年は溜息をつきながら言いました。

「夢の中で、とある庭園に行ったのだが、その子は眠っていて魂はどこかに抜け出してしまっていた」。

聞いて宝玉、いきなり声をかけました。「私は宝玉さんを訪ねてきてたんですよ。あなたが宝玉さんでしたか!」

宝玉、虚言を信じて人事不省になる(第57回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

紫鵑に「私どもの姫様(黛玉)は来年蘇州にお帰りになります」と言われた宝玉、大ショックを受けます。廃人のようになって帰ってきた宝玉を見て、襲人らは大慌て、必死の介抱にもかかわらず宝玉は呆けたままです。襲人は血相を変えて紫鵑のところに怒鳴り込みました。

驚いた黛玉は飲んだばかりの薬を全部戻してしまい、泣きながら「縄で私を縊り殺して!」と訴えます。襲人が紫鵑を宝玉のところに連れていくと、宝玉は突然わっと泣き出して紫鵑にすがり、「私も連れてってくれ」と懇願しました。蒸汽船の模型を見て「大変だ!迎えの船が来た!」と大騒ぎする宝玉。

医者は「一時的な精神錯乱」と診断しました。

趙氏、芳官らと大ゲンカ(第58~60回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

賈環が芳官に「薔薇硝」をねだって「茉莉粉」をもらってきたことに憤慨した趙氏、「よくもわが息子をたぶらかしおったな!」と青筋立てて園に押し掛けてきました。そこへ出くわした夏婆さん、「昨日も奴らは園で紙銭を焚いていたんですよ」と煽ります。

勢いづいて怡紅院に怒鳴り込んだ趙氏、芳官に往復ビンタをみまいます。逆上し、転がりまわって暴れる芳官。それを見た葵官・藕官・荳官の3人、慌てて芳官に加勢します。荳官が頭突きをくれ、趙氏がよろめいたところに4人で飛びかかり、叩くわ引っ掻くわの大騒動が始まりました。


(7)第61~70回

五児、冤罪で軟禁される(第61・62回)

その日、五児は母が手に入れた茯苓霜を芳官にお裾分けしようと園に入ったのですが、帰りに林之孝の女房に出会います。丁度、王夫人の部屋で失せ物があったと聞いていた林之孝の女房は五児を疑います。運悪く料理部屋から玫瑰露(実は芳官がくれたもの)と茯苓霜(実は伯父がくれたもの)が出てきたため、五児は盗みの容疑で一晩軟禁され、泣き明かしました。

結局宝玉や平児の働きで、釈放されましたが、これが元で五児は寝込んでしまい、侍女見習として宝玉の部屋に入る話は先送りになってしまいました。

盗みは実は彩雲が趙氏に頼まれてやっていたことでした。彼女は五児が罪を被ると聞いて全てを打ち明けます。

湘雲、芍薬に埋もれて眠る(第62回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

宝玉たちの誕生日の祝宴が紅香圃にて賑やかに催れますが、散会の時になって先ほどまで賑やかにやっていた湘雲の姿が見えません。

「雲のお嬢様が…築山のうしろの黒い石の腰掛に眠っていらっしゃいます」との小女中の報告を受け、みんなで声を殺しながら行ってみると、先ほどの酒令で酔いつぶれた湘雲が石の腰掛けの上でぐっすりと眠っていました。その身には芍薬の花が散りそそぎ、蝶の群れがその周りを飛び回っていました。

人々は笑いながらも押したり引いたりして起こそうとしますが、湘雲はなおも寝ぼけてぶつぶつとつぶやいています。

怡紅院の群芳夜宴(第63回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

引き続き、怡紅院では夜宴を開くことになりました。夜が更けると、宝釵・黛玉・探春・李紈・湘雲・宝琴・香菱を引っ張り出し、酒を飲みながら花占い(酒令)に興じます。

宴がお開きになって皆が帰ったあとも酒令は続き、負けた方が小曲を歌う約束で拳を打ち始めます。瓶一杯にあった酒がたちまち空になると(老女たちが盗み飲んだ方が多かった?)、皆ひっくり返って寝込んでしまいました。

尤三姐、自ら頸を刎ねて死ぬ(第65・66回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

尤氏の異母妹にあたる美貌の姉妹、尤二姐と尤三姐。賈敬葬儀の際に邸に入った彼女らに賈珍父子と賈璉がちょっかいを出し始め、賈璉はついに尤二姐との婚礼にこぎつけました。勿論、熙鳳に知られたら大変ですので、外に邸宅を賈って囲い入れます。

一方の尤三姐は、柳湘蓮に心を寄せていました。それを知った賈璉は湘蓮の行方を探りますが全くつかめません。しかしその後、賈赦の用件で平安州まで差し遣わされた賈璉、旅の途中で、薛蟠と湘蓮が連れだって旅をしているのに行き会います。訝しがって顛末を聞くと薛蟠は「途中で賊に襲われた時に柳さんが助けてくれ、義兄弟の契りを結んだのです」と答えます。

賈璉はこの際だからと湘蓮に向かって「柳さんに似合いの嫁さんの候補者があるのですよ」と持ちかけます。湘蓮が乗ってきたのを見て「結納を入れていただきたい」と申し出ると、湘蓮は家宝の「鴛鴦剣」を賈璉に差し出しました。

鴛鴦剣を手渡された尤三姐は、毎日これを眺めては一日千秋の思いで彼の到着を待っていました。そこへ顔色を変えた湘蓮が現れ、「叔母が私の縁談を決めてしまいました。あの剣は返していただきたい」と申し出たではありませんか。

実はこれより先、湘蓮は宝玉に会い、尤三姐が寧国邸ゆかりの者だと聞き、「東邸できれいなのは石の獅子くらいのもの、結婚なんか断じてできぬ!」と決めつけていたのでした(ひどい…)。

今はこれまで、と悟った尤三姐。剣を手に湘蓮の前に現れ、「結納の品はお返しします」と言って涙を雨のようにこぼし、自分の頸を刎ねてしまいました。

尤二姐、地金を飲んで死ぬ(第68・69回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

ある日、尤二姐は熙鳳が訪ねてきたと聞いて仰天し、慌てて迎え入れます。熙鳳はねんごろに尤二姐に接し、屋敷の方へお引き移りくださいと声をかけます(勿論、腹の中では彼女をぶっ殺す計画ができあがっています)。すっかり騙された二姐、熙鳳について大観園に入りました。

ところが3日もたつと侍女(善姐)が言うことを聞かなくなりました。用を言いつけると食ってかかり、食事もろくに運んでこなくなります。熙鳳はまた、秋桐(賈赦が賈璉に与えた妾)を焚きつけて悪態の限りをつかせます。恥と怒りで二姐は忽ち病気になってしまいました。

ある日、彼女の夢枕に尤三姐が立ち、こう言いました。「生前の淫奔な行いの罰があたったんですわ。この剣であの女を斬って捨てなさい」。二姐は答えます。「つらくても我慢しとおすつもり。人を恨む筋合いはないでしょう」

しかしその後、藪医者にかかって堕胎させられた二姐は、ついに覚悟を決めます。涙ながらに生金の塊を呑みこんで自害しました。


(8)第71~80回

迎春、部屋のケンカに知らんぷり(第73・74回)


上海古籍出版社「戴敦邦新絵全本紅楼夢」より

史太君のいいつけで園内でバクチを打っていたものが明るみに出、罰せられることになりました。そのうちの一人、王婆さんは迎春の乳母であることから、住児(王婆さんの息子)の妻は迎春に取りなしを求めにきました。

ところが、迎春と繍橘(侍女)は王婆さんがくすねた金絲鳳のことを話題にしています。構わずに申し出ると、繍橘に「金鳳を返してからの話にしましょう」と迫られます。すると、その女房、「こちらでかさんだ費用は私どもがやりくりしているのですよ。今までに30両は穴埋めしたことになるでしょうよ」等と言い出します。これには司棋も飛び出してきて繍橘に助勢し、その女房を問い詰めます。

一方の迎春は聞こえぬふりをして本を広げています。そこへ探春・黛玉・宝琴が入ってきました。

大観園の部屋検め(第74回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

園内から香袋が出てきたことに激怒した王夫人は、抜き打ちで園内の部屋検めをするよう指示しました(王善保の女房というバカ女にそそのかされたため)。熙鳳を頭に検査団が結成され、「失せ物が出たため持ち物を検査して皆の嫌疑を晴らしたい」との名目で各部屋の取調べが進められていきます。

ところが聞きつけた探春、これを出迎え、「私の品は検めを認めますが、腰元たちのは絶対に許しません」と突っぱねます。さらに「屋敷内で自らを滅ぼすようなことをせぬ限り、一敗地にまみれたりはしないのですわ」と涙を流します。熙鳳たちはこれを聞いて辞去しようとしますが、調子にのった王善保女房は探春の服の裾をまくり、「お姫様のお身体まで調べさせていただきました」と笑います。その瞬間、探春の平手打ちが王善保女房の頬に飛びました。

この取調べにより司棋・入画が邸を追われ、宝釵は嫌疑を避けて自ら園を出ていきました。

晴雯、邸を追われて夭折する(第74・77回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

王善保の女房が晴雯を悪し様に訴えたのを真に受け、王夫人は晴雯を呼びつけて「明日にもお前を出すことにするから」と言い放ちました。晴雯は悔しさで園に戻るまで泣き通しの有様、この日より病状を悪化させます。

数日してとうとう王夫人が園に乗り込んできます。病床の晴雯はオンドルから引きずり下ろされ、髪はぼうぼう、垢染みた素顔のままで引っ立てられていきました。

その夜、宝玉は邸を抜け出して見舞いに行きます。宝玉の手を取ってむせび泣き、悔しさを訴える晴雯。

翌朝、宝玉の夢枕に晴雯が立ち、別れのあいさつをしました。

夏金桂、薛家をかき乱す(第79・80回)


経済日報出版社「紅楼夢連環画」より

薛蟠が一目惚れし、戸部出入りの大商家・夏家より嫁を迎えました。ところがこの夏金桂、花のような容貌でありながら、唯我独尊型のあばずれ女でした。嫁に入って間もなく薛蟠を尻の下に敷くようになり、香菱に嫉妬してこれを目の敵にし始めます。

まず、侍女の宝蟾を薛蟠の妾として進呈し、香菱に用を言いつけて、二人が抱き合っている現場に送り込みました。宝蟾に逃げられた薛蟠は香菱を怒鳴りつけます。

次いで香菱を自分の部屋で寝起きさせ、自分の枕の中に自分を呪う人形をおいて(本当に呪われたらどうするつもりだったんだろう?)、香菱に嫌疑を向けました。激怒した薛蟠は、閂で香菱を打ち据えます。

宝釵が香菱を引き取り、目の前のトゲがなくなった金桂は、次に宝蟾に矛先を向けます。ところが宝蟾は烈火の如き気性の女でした。金桂が癇癪を起こすと、宝蟾は転がりまわって大暴れするようになります。