4.賈家の親戚
- (1)林家(揚州)関係
- 先祖は列侯を襲爵し、如海で五代を重ねましたが、如海の死で断絶しました。本籍地は姑蘇。
- ▩林如海(50前後)
- 名は海。揚州の巡塩御史。会試に第3席(探花)で及第。黛玉の1つ下の男子が3才で亡くなり、子運には恵まれませんでした。罷免されてプラプラしていた賈雨村と知り合い、彼を黛玉の家庭教師に招きます。妻の死後、雨村(復職のため)と黛玉(賈邸で面倒を見てもらうため)を上京させました。
そんな彼も黛玉9才の時病死、黛玉の悲しみはいかばかりだったでしょうか。
- ▩賈 敏
- 如海の妻、賈赦・賈政の妹。黛玉6才の時にふとした病がもとで亡くなります。彼女を含めて姉妹は4人いましたが皆早逝でした。
- ▩林黛玉(14)
/金陵12釵
- 如海の娘で、紅楼夢のヒロイン。2月12日生。母の死後、史太君の声がかりで上京しました。大観園では瀟湘館に住みます。生まれながらにして病弱な上、神経過敏で度量が狭く、日夜泣いてばかりいます。当初は宝釵をライバル視していましたが、本意を知って和解します。前世は絳珠仙女、その因縁で宝玉を一途に思い詰めますが叶わず、肺病と気落ちから、宝玉の婚儀の時刻にひっそりと息を引き取ります。
- (2)薛家(金陵)・王家(金陵)関係
- 薛家は紫薇舎人薛公の後裔で代々学問の家柄。宮中の御内帑金御用達をつとめていました。上京して梨香院に入りますが、その後薛蟠が逮捕され、用達を願い下げ、質屋も全て欠損で倒産しました。
王家は都太尉統制県伯王公の子孫、子騰の死で子勝が後を継ぎます。
- ▩王子騰
- 王夫人の弟。京営節度使→九省統制(薛家が上京する間際に昇任し辺境へ)→九省都検点→内閣大学士になって上京の際、風邪をひき、医師の投薬ミスであえなく死亡しました。文勤公と諡されています。娘は保寧侯の子息と結婚しました(第70回)。
- ▩王子勝
- 王子騰の弟。爪で火をともす程のケチとのこと。
- ▩薛未亡人(47前後)
- 王夫人の妹。気がよくておおらかな女性です。王夫人の勧めで上京し、邸に入りました。親のない黛玉を不憫がって可愛がり、また薛蟠、薛蝌、宝琴、宝釵の婚儀を手がけました。薛蟠の逮捕後は金をバラまいて赦免を求めています。
- ▩薛 蟠(19)
- 薛未亡人の息子。字は文起。5月3日生。幼くして父を亡くし、素行の収まらないならず者に育ちました。香菱を買い入れる際に殺人を犯していますが、雨村の働きで事なきを得ました。賈家に入ると仲間ができて一層堕落します。金桂と結婚後は完全に威を失墜、尻に敷かれます。太平県で張三を殺して捕えられ、死罪は免れぬ状況でしたが、大赦令が出、また薛未亡人の働きで釈放されました。
- ▩香 菱(17)
/副12釵
- 甄士隠の娘。5才の時誘拐され、売られて薛蟠の妾となりました。器量も人柄も人に優れ、薛家にまめに仕えています。大観園に入ると黛玉に詩を学び熱中しました。薛蟠の結婚後は金桂に目の敵にされ、更に金桂の計で薛蟠に疎まれます。金桂に毒殺されかけましが、幸い(?)金桂が誤って自ら毒を飲んで死んでしまいます。薛蟠の出所後は正妻になりますが、難産で死に、士隠に迎えられています。
雪芹の構想では金桂にいびり殺されるはずだったようです(第5回注など参照)。
- ▩宝 蟾
- 金桂の侍女→薛蟠の妾に。性格は激しく常に金桂とぶつかります。金桂が死んだ時は激しく香菱を責めますが、自分に嫌疑がかかり、その死因を推定しています。
- ▩夏金桂(17)
- 薛蟠の妻。夏家は戸部出入りの商家。父が亡くなり、甘やかされて育ったため、器量はよいものの、あばずれ女になりました。日々大騒ぎして薛家をひっくり返しています。香菱を毒殺せんとして、誤って自分が毒汁を飲んで死にました。
- ▩金桂の母
- 金桂の結婚後上京しました。金桂の死を聞くや息巻いて薛家に怒鳴り込みますが、宝蟾とのやりとりで金桂の品を実家に運び込んでいたことが発覚します。金桂の死因が判明するとオロオロして検屍の取りやめを頼み出ています。
- ▩夏 三
- 金桂の従弟で実家の養子。夏家に入ってから身代を食いつぶしました。金桂の死を聞いて母と共に薛家に乗込み、大暴れしています。駆けつけた賈璉によってつまみ出されました。
- ▩薛宝釵(17)
/金陵12釵
- 薛未亡人の娘。黛玉とともに物語のヒロイン。1月21日生。学問才識深く、おしとやかで慎み深い女性です。幼い頃から父親に学問をしこまれ、女官候補となるべく家族と上京しました。大観園では蘅蕪院に住みます。士太君の発案で[金玉縁]のとおり宝玉と結ばれました。宝玉を諫めて学問に向かわせますが、宝玉は受験後に失踪しました。将来は遺児・賈桂が賈家を再興する、と予言されています。
- ▩薛 蝌(15~17)
- 薛蟠の従弟。宝琴を梅家に嫁がせるために上京しました。薛蟠の釈放のため奔走しています。賈邸に差押えの手が入った時も情報収集のため奔走しています。邢岫烟と結婚し、自分の持家に引き移りました。
- ▩薛宝琴(13?)
/副12釵
- 薛蝌の妹。幼時、父の商用で諸国を巡りました。薛蝌と共に上京した折、史太君が一目で気に入り、王夫人の養女にして自分の膝元で育てることを決めました。梅翰林の息子と婚約中で、兄の婚姻と同じ頃嫁に行き、何不自由なく暮らしたとのことです。
- ▩梅翰林
- 薛蝌の父が都にいる時分に、宝琴が息子の嫁になる約束をしていました。
- (3)史家(金陵)関係
- 保齢侯尚書令史公の後裔。本籍地は金陵。都におり、今は困窮しています。
- ▩史 鼎
- 湘雲の伯父。忠靖侯。地方の大官として転出し、のちに帰京しました。第13回では妻が可卿の弔問に訪れ、第14回では本人が葬送に参会しています。また、南安郡王とは親しく交流しているようです。
- ▩史湘雲(14?)
/金陵12釵
- 史家の姫君。幼い時に両親を亡くし、叔母と暮らしていました。生活に困窮し日々夜なべ仕事に追われていたようです。1ヶ月~数日の滞在で賈家を訪れていましたが、伯父・史鼎の転任に伴い大観園に移りました。茶目っ気多く快活で才気煥発な女性です。嫁入りして間もなく夫が肺結核で死亡し、一生後家を通すことを誓っています。
- ○湘雲の結婚相手は誰か?
- 現行本では湘雲の夫の名前は明らかにされていません。探佚学では衛若蘭と結ばれたとされますが、反対意見も根強く、最終的に宝玉と結婚したとの説もあるようです。
- (4)甄家(金陵)関係
- 賈家と古くからの親戚筋。罪を犯して家産を没収されましたが、後に再興します。
- ▩甄宝嘉
- 甄家の殿。字は友忠。勲臣の後裔。金陵城内の勅任体仁院総裁を務めましたが、罪を犯した角で家産を没収された上、帰郷服罪します。その後世襲職を帰され、安南安撫使に赴任しています。
- ▩甄夫人
- 宝嘉の妻。第56回で三番目の姫を連れて上京しています。
- ▩甄宝玉(15)
- 宝嘉の息子で宝玉と瓜二つ。6歳の時、賈雨村が家庭教師をしますが、手を焼いて辞めてしまいました。第2回で「先祖伝来の屋台骨を守り抜き、先生や長生の戒めに従うことなどできっこない」と雨村に言われています。
宝玉と同年同月同日生まれで、性格もそっくりでしたが、一足先に大虚幻境を訪れ、学問に目覚めました。李綺を娶っています。賈宝玉・賈蘭と共に科挙に及第しました。
- ▩包 勇
- 甄家の手代で家産没収後、賈家に来ました。賈家が家産差押えでガタガタした時も誠意をもって仕事に励んでいますが、酔って雨村に怒鳴りつけたのを賈政に咎められ、大観園の番人に回されました。邸に入った強盗に立ち向かい、何三を打ち殺しています。甄家再興後は江南に帰りました。
- (5)賈家親族
- ▩賈代儒
- 家塾の塾長として一族の子弟の教育を任されています。賈家の義塾は先祖の手で作られたもので、一族(外戚も含む)の子弟で貧しくて先生を招くだけの資力のない者が入って勉強できるしくみになっています。あまり真面目な生徒はいないような気もしますが…
- ▩賈 瑞
- 代儒の孫。字は文祥。代儒不在で塾の監督をしている時、秦鐘と香憐の訴えを受けて逆に香憐を叱りつけ、大騒動を引き起こしました。賈敬の誕生祝の際に熙鳳にちょっかいを出し、熙鳳の毒計にはまって病を発し、風月宝鑑をのぞいて死にました。
- ▩賈 芸(20)
- 西長屋の五嫂の息子。賈二。14~15歳の時父を亡くし母と二人暮らしています。第24回で宝玉の養子になり(宝玉はすっかり忘れていたけど)、彼に白海棠を贈りました。熙鳳に取り入って大観園に花を植える仕事をまわしてもらった際に、偶然会った小紅を見初めています。巧姐の事件後、邸から追い出され、出入りを禁止されました。
探佚学によれば、賈芸は小紅と結ばれ、賈家が家産没収に会った際に、獄につながれた宝玉を救出する重要な役まわりを与えられていたそうです。
- ▩卜世仁・卜銀姐
- 卜世仁は香料屋を営む賈芸の叔父。第24回で賈芸が竜脳と麝香を掛売りで求めますが、断った上にひとくされ説教をしています。銀姐は娘の名前。
- ▩賈 芹
- 三の分家の四男坊。裏街に住んでいます。第23回で小坊主と小道士が送り込まれた鉄檻寺の管理者に任じられましたが、目の届かぬを良いことにバクチや酒食に耽り、後に尼との振舞を張紙で中傷されました。
- ▩周 氏
- 賈芹の母。第23回で小坊主と小道士を転任させるとの話を聞き、息子に仕事をくれるよう熙鳳にすがりに来ました。
- ▩賈 菌
- 栄国邸近縁の曾孫。塾の同窓で賈蘭と仲良し。向こう気が強く、塾騒動の際には金栄の友人が投げた硯が自分の水滴を砕いたのに腹を立てて暴れ始めています。
探佚学によれば、彼は賈蘭と共に立身し、賈家の栄光を挽回する役割を果たすそうです。
- ▩婁 氏
- 賈菌の母。若くして寡婦になったそうです。名前は第53回のみ
- ▩賈 璜
- 賈家の直系の子孫。東横町に住み、わずかな家産を大事に守って暮らしています。第9・10回に名前のみ出てきます。
- ▩金 氏
- 賈璜の妻。胡氏から塾騒動の顛末を聞いて寧国邸にねじこみに行きますが、未遂に終わりました。第9回で茗烟に「おべんちゃらをたたいてうまい汁を吸おうって能しかない、若奥様にへいつくばって質草を借り出そうって人」とこきおろされています。
- ▩胡 氏
- 金氏の義姉(ということは金氏は死んだ夫の妹)。家塾騒動のことで愚痴をこぼす金栄をなだめましたが、金氏に口をすべらせ、寧国邸にねじこみに行く!と息巻く彼女を必死に止めようとしています。
- ▩金 栄
- 胡氏の息子。第9回で家塾で秦鐘と香憐の密会現場を押さえた!と言って騒ぎ立て、大騒ぎを引き起こしました。宝玉の書童たちに「妾の子め!」と言われています。
- ▩賈 㻞
- 賈家との血縁関係は不明。賈敬死去の際に、邸に帰る賈珍らの代わりに史太君の警護をするため、賈璜と共に駆けつけています(第63回)。
- ▩賈喜鸞
- 賈の妹。第71回で史太君80歳の祝宴に母に連れられて参加し、その器量としぐさを史太君に気に入られます。巧姐事件頃は嫁に行っていたようです。
- ▩賈 瓊
- 賈家との血縁関係は不明。第13回で可卿の悔やみの際、賈薔・賈蓁・賈璘と共に客の応対をしています。
- ▩賈四姐
- 賈瓊の妹。第71回で史太君80歳の祝宴に母に連れられて参加し、その器量としぐさを史太君に気に入られます。巧姐事件頃は嫁ぎ先が決まっていたようです。
- ▩賈萍・賈菖・賈菱
- 賈家との血縁関係は不明。第23回で元春省親の際に姉妹が詠んだ題詠を、大観園内の石に彫り刻むことになり、賈珍・賈蓉と共に工事監督にあたっています。
- ▩賈 芝
- 賈家との血縁関係は不明。第105回で西平郡王が勅旨を申し渡し、賈赦が逮捕される席に居合わせました。
- ▩賈 瓔
- 賈家との血縁関係は不明。賈敬死去の際に賈璜・賈荇・賈㻞・賈菖・賈菱と仕事を分担しています(第63回)。
- ▩賈荇・賈芷
- 賈家との血縁関係は不明。第53回で賈家宗祠の時、内の儀門のところから彼らを先頭に列をつくり、料理を賈敬のところまで順送りに届けています。
- ▩賈代修・賈敕・賈效・賈敦・賈珩・賈珖・賈琛・賈璘・賈蓁・賈藻・賈蘅・賈芬・賈芳
- 可卿の悔やみに来た一族ですが、いずれも血縁関係は不明。「攵」「玉扁」「草冠」で輩行だけが分かります。
- ▩香憐・玉愛
- 塾の同窓で多情な生徒(男です)。共にあだなで本名は不明。入塾した宝玉と秦鐘に好意をもち、秦鐘と香憐の密会を金栄に見られたことが塾騒動を招きました。