女媧は太古の女神で、伏義(ふくぎ)の妹とも妻ともいわれ、蛇身人首の姿に描かれます。
「太平御覧(ぎょらん)」によれば、女媧は人類創造の母神とされます。天地開明のころ、鳥獣虫魚は既にいましたが、人間はまだおらず、女媧は池のほとりで黄土の泥をこね、池に映った自分の姿を手本として人間を一人一人こしらえました。その後、数を増やすために縄を泥水にひたしてふりまわすと、その飛沫から多くの人間が産まれました(前者は貴人、後者は貧乏人や愚か者になったとされます)。
その後、大地は平和で人類は順調に繁殖しましたが、「列子」や「淮南子(えなんじ)」によれば、ある時、天を支える四極の柱が傾いて、地が裂け、世界は大いに乱れました。火災や洪水が続き、猛獣が人々を襲う事態になりました。女媧は五色の石を煉って天にあいた穴を修復し、天がまた傾いたり破れたりしないように、鼈(おおがめ)の足を切り取って四柱に代えたとされます。
女媧が伏義の妹であるとか、妃であるとかの伝承は後の時代に成立したもので、最古の神話では二人は別々の神であったのではないかとも考えられています。
共工は炎帝神農(しんのう)氏の子孫で、家神祝融(しゅくゆう)氏の子とされる太古の神で、赤髪で人面蛇身で、洪水を起こす水神とされ、天地を打ち崩すほどの怪力をもっていました。
「列子」によれば、共工は顓頊(せんぎょく)と帝の地位を争って敗れ、怒りにまかせて暴れ回った末に、天を支える柱がある不周山に激突しました。そのため天柱が折れて、天は傾いて西北が低くなり、地は東南が凹んでしまいました。このため、せっかく女媧が補修した天は再び欠損し、地も押しひしげられて、それっきり直す神はあらわれず、中国の河川が東南方向に流れるのはこのためとされます。