賈璉は「どこだって同じようなもんさ。とにかく今は、今年の年越しをどうするかってことだな。この銀子だって借金したもので、先日、旺児に飾り灯籠や花火の準備をするように言ったところさ。今年は殿様が昇進されて、去年より賑やかにすべきところだからな。ただ、周瑞が戻ってきて言うには、荘園はまた飢饉で、年を越せずに逃げてしまった者もずいぶんいるそうだ。来年の収益だってそうは見込めないだろうな」。 煕鳳は「一年また一年と苦しくなって、荘園では飢饉続きとなれば、私たちも生活ができなくなるわね」。 賈璉は「だから私の考えでは、荘園のいくつかは売った方がいいと思うんだ。どうせそこは今年の収益がないんだから、早いうちに売り飛ばすに越したことはないんだがな」。 煕鳳は「でも殿様が賛成されないわよ。それに、ご隠居様や奥様がお知りになったら、荘園が飢饉で収入が見込めないなんておっしゃらず、きっと私たちに腕がないせいだって思われるわ」。
煕鳳は平児が出て行ったのを見て、こっそり賈璉に尋ねました。「あの年、あなたが林のお嬢さんを迎えにいった時に持ってきたものは、何年かのうちに穴埋めとして使ってしまったけど、あちらにはまだ何か残っているの?」 賈璉は「揚州の家屋と田畑は全部売った。蘇州のはまだ残っているよ」。 煕鳳はこれを聞くなりピンとひらめいて、「そういうことなら、年を越したら、ひとっ走り行ってくださいません? どのみち林のお嬢さんは南には戻らないんだもの。林家には人がいないんだし、それに林のお嬢さんが将来嫁に行くにもお金が必要だもの。いっそのこと、その家屋と田畑を売ってしまえば、この2年間は赤字を埋めることができるわ」。 賈璉はかぶりをふって嘆息し、「殿様に知られたらまずいだろう。それに、林家には祖廟を守る遠縁の親族がいるんだから、殿様に訴え出たらどうするんだい!」 煕鳳は冷笑して「あなたってご隠居様の金銀の器をかすめてくる度胸がありながら、これっぽちのことを恐れるの? 蘇州はここから千里も離れているんだし、殿様は私どもの家にどのくらいの荘園があるのかもよく存じないんですもの、林家のものを管理できるわけないじゃないの。林家に遠縁の親族がいたって、祖廟の屋敷といくらかの田畑は売らずに残し、一人に十、二十両も銀子を渡せば何の問題もないわよ。彼らだって千里も彼方から殿様に訴えに来るわけなんてないじゃない」。 賈璉は笑って「いいだろう、このことはお前に任せるよ。ただし、このことは内密にな。私は年を越したら行くことにするよ」。 煕鳳は「安心して行ってらっしゃい。ただ祖廟の屋敷を見て、祖先を祀りに南京に行くってだけ言えばいいわ。連れて行くのを旺児だけにすれば、誰も気づかないうちに事が運べるってものよ。いかが?」 賈璉は喜んで「お前の考えはまさに万全だな。何千両かの銀子をもって来ないことには、本当にやっていけないところだからな」。 煕鳳は笑って「またそうやってごまかすのね。私の前で抜け目ないわね。じゃあ聞きますけど、たった何千両かにしかならないのかしら?」。 賈璉は笑って「せいぜい一万両だろう。わかったよ、欲しい物があるなら行ってごらん、必ず持ってきてあげるから」。 煕鳳は笑って「南方の新しいタイプのかんざしを何本かと、腕輪を二対、適当に私と嬢ちゃんに買ってきてちょうだい。質に入れた金のネックレスと首飾りもやっと請け出せるわ。一千両の銀子は穴埋めに使わせてもらうわよ。実際、あなたのために穴埋めしたんだから」。 賈璉は笑って「おまえが容赦ないことは分かったよ。今回はこれだけだとしても、今後は何を要求してくることやら」。 煕鳳は起きあがると賈璉を指さし、罵って言いました。「私がなぜあなたに無心しなくちゃならないの? 王家から持ってきた嫁入り道具は、首飾り一つとっても私が一生使うのに十分だったわ。先日夏太監が無心に来たので、金のネックレスを質に入れて穴埋めしたのよ。ほかにもどれだけ立て替えたものか、計算してごらんなさいよ。私に感謝するどころか、そんなことを言うなんて。今後も私に立て替えさせようって言ったってもうダメですからね」。 賈璉は急ぎ拱手の礼をするのでした。
二人はまたしばらく話をしました。賈璉は「平児は二の妹妹への正月の贈り物を用意していたのかい? 二の妹妹も可哀想に。なんでも殿様が孫家に借金をして、借用書を取り戻そうとしても孫紹祖は返そうとせず、かえって二の妹妹を罵っているっていうんだぜ。まったく憎らしいじゃないか」。 煕鳳は「全ては殿様のせいね。借金のつけに一人の女の子を台無しにするなんてひどいわ。殿様もあまりに短絡的でしたわね」。 二人はしばし嘆息してから寝ました。
話は二つに分かれますが、栄寧の二府では正月で数日間賑やかでした。破五(正月五日)が過ぎると、街には色とりどりの飾り灯籠が現れます。栄寧二府の小者たちも忙しく駆け回り、二府では銅鑼や太鼓の音が鳴り響き、爆竹の音が鳴りやみません。獅子灯や龍灯、高蹺踊り(竹馬のような木製の棒を足にくくりつけて踊るもの)、旱船(若い女性に扮した人が模型の船を腰に結びつけて歌いながら踊る民間舞楽)などが絶え間なく往来し、みながまず賈母に年始のあいさつをしにやってきます。
賈母のところでは早くから人でいっぱいでした。まず賈政の小者たちが獅灯で踊り、続いて賈赦の部屋の者が「孫行者が火焔山を越える」の芝居を行いました。鉄扇公主が芭蕉扇を扇ぐと、山上の火はさらに勢いを増します。孫行者は顔左側の毛を焼いて、いらいらとじれったがり、猪八戒は傍らで大きな口を開け、大きな耳たぶをパタパタとあおぎ、首を振って嘆息します。これには賈母や薛未亡人たちも笑いが止まりません。
ふと見ると、賈璉の部屋の興児、柱児ら八人の小者も四組の民間の夫婦に扮し、高蹺をつけてやってきました。興児は婦人に扮し、髪を髷に結い、高蹺をつけて踊り、くねくねと体をくねらせます。すだれの内側の娘たちはみな口を押さえて笑い、賈母も笑って尋ねます。「手前のあの夫婦はどこの小者たちが扮したんだい?」 煕鳳は笑って「私どもの柱児と興児です。ご隠居様、彼らの踊りはいかがでした?」 興児らは、高蹺の上から急ぎ賈母や薛未亡人らに新年の挨拶をしました。賈母は「この子はきれいに奥さんに化けて、わざわざ高蹺をつけて来てくれたんだね。めいめいに祝儀を取らせよう。新年だし酒を買って飲むといいよ」。 興児らは急ぎ拱手して礼を述べ、祝儀をもらって辞しました。
見れば賈環も蝦灯を持って踊っていました。その蝦は頭から尾まで揺れ動き、目は灯籠のように光ります。巧姐は一目見てわっと大声をあげて遊ぼうとしますが、賈環は巧姐に目配せするだけであげようとはしません。煕鳳は「私たちのところにも素敵な灯籠はたくさんあるのに、どうして蝦灯なんかを欲しがるの?」と言って振り返り、豊児らに命じて持ってこさせます。しかし、持ってきた魚灯、蚌蛤(ハマグリ)灯などは、巧姐は遊んだことがあったので欲しがろうとしません。煕鳳は仕方なく、魚灯、蟹灯、蚌蛤灯を賈環の灯籠と交換させると、巧姐は喜んで侍女たちと遊びに行ってしまいました。
賈母は最初は色とりどりの飾り灯籠を見て喜んでいましたが、何日もたつと次第に飽きてきて、表で先に披露させ、精緻なものだけを選んで中に入れさせました。次第に精緻なものも見なくなって、「私も疲れたから、彼らには各部屋に踊りに行かせておくれ。ここに来ずともいいよ」と言います。 煕鳳は「ご隠居様、数日間はゆっくりとお休みになってください。良いのはまだ裏にありますから。元宵節には素敵な花火を用意していますので、その時は私も奥さん方も楽しませていただきますわ」。 賈母は「何が素敵な花火なもんかい。おまえはまだ世間を見ていないんだから、面目を失わないといいがね」。
たちまち十三日が過ぎ、早くも上弦の佳節となりました。この日、劉婆さんが雪梨を載せた車2台を引く人を連れ、板児と一緒に街に灯籠を見にやってきました。まず栄国府の煕鳳のところを訪れ、新年のあいさつをします。煕鳳は笑って「お婆ちゃんいらっしゃい。ご隠居様もあなたのことを気にかけていて、田舎のほうは忙しいから、街に灯籠を見に来るどころではないんじゃないかっておっしゃっていたのよ。私はご隠居様に、そう気を揉まなくても、この2日のうちにお婆ちゃんはきっと来るって言っていたんだけど、やっぱりいらしてくれたわね」。 劉婆さんは「板児は早くから来たいって騒いでいたんですが、今年は天気がよくて果物がたんと採れましてね。この雪梨は板児の父が作ったものですが、こんなに美味しくはなかなかできませんから、自分のところで食べるのはもったいないし、急いでご隠居様や奥様方にお届けする用意をしましたので、2日遅れてしまいました」。 煕鳳は「では、ご隠居様に会いに園に行きましょう。ご隠居様は園内でお嬢さんたちが灯籠を作っていると聞いてお喜びになり、一休みしてからすぐに園に行かれましたわ。私も仕事があるから、今行ったほうがいいわね」と言って、平児に劉婆さんの果物を各部屋に分け届け、別に鴛鴦と襲人にも忘れずに届けるように言いつけてから、劉婆さんを連れて園に行きました。
実は、賈母は鴛鴦から園内で各部屋の侍女たちが飾り灯籠を作っていると聞き、十四日の午前中に、小侍女をやって薛未亡人、宝釵、宝琴、李未亡人に園に灯籠を見に来るように誘いました。邢、王の二夫人もこれを聞いて園を訪れ、尤氏もやって来ました。
煕鳳は元宵の灯火の一件が少し遅れていましたが、劉婆さんが来たので引き連れて園に来ました。小侍女たちがすぐに、ご隠居様は怡紅院にいらっしゃいます、と伝えます。そこで、煕鳳は急ぎ劉婆さんとともに怡紅院にやって来ました。
見れば、怡紅院の遊廊には色とりどりの飾り灯籠が掛かっています。孔雀、白鶴、鳳、蝶々、トンボ、コウモリ、ヒシクイなどがあり、全てが五色のうすぎぬで作られています。賈母や薛未亡人、李未亡人、李紈、尤氏たちもみな廊下で観賞していました。
煕鳳は劉婆さんを連れて賈母の前に行き、「ご隠居様、誰がきたかご覧ください」と言うと、劉婆さんは急ぎ進み出て新年のあいさつをしました。
賈母は劉婆さんを見ると、喜んで引き起こし、笑って「あんたが来られないので、午前中もこぼしていたんだけど、午後になったら来てくれたんだね」。 劉婆さんは「早く来たかったんですけど、おととし、わずかばかりの山地を買ったおかげて、板児の父がせわしくして、いくらかの果樹を植えましたところ、とても美味しい果実がなり、自分はそれほど食べないし、ご隠居様にいいところを食べていただこうと思いまして持ってまいりました。これも私たちのせめてもの気持ちです」。 煕鳳は「劉のお婆ちゃんが持ってきた果物は大きくて甘くて、本当に得難いものですわ。ご隠居様も味わってみてはいかがです?」と言って大皿に盛らせて持ってこさせ、自ら一つ剥いて賈母に渡し、薛未亡人と李未亡人にも差し出しました。
賈母は「農家は一年中大変なんだし、やっと果実が採れたんだから、子供たちや自分が食べる分にとっておけばいいのに、わざわざ遠いところを運んできてくれたのかい?」 劉婆さんは「これもみな、ご隠居様の福のおかげです。やっとわずかばかりの痩せた田畑を買って、米や果物を植えることができました。今年は幸い干魃や水害にもあわず、衣食の心配もなくなりました」。 賈母は「明日は元宵節だし、あんたは遠くから来てくれたんだから、どうしたって元宵を過ごし花火を見てから帰ってもらうよ。今日は私と一緒に、嬢ちゃんたちが飾り灯籠を作るのを見てもらいましょう」。
劉婆さんは何度も手を合わせ、「阿弥陀仏、私もご隠居様について目の保養をさせていただきたいと思います。前回、こちらの園に入った時は、まるで王帝様の花園に来たかのようでした。帰ってから田舎の人たちに言っても誰も信じてくれません。そして、あんたも年だから夢でも見たんでしょうって言われましてね。そこで、彼らに餃子やケーキをあげたら、半信半疑ながら、なるほど仙界でこしらえたものですなぁ、人間界にはどこにもこんな精巧なケーキはありませんからな、って言っていました。私どもの田舎の者たちを栄国府に連れて来たら、きっと、ここは神仙の住むところで、凡人が来るところじゃないって言うでしょうな」と言ったものですから、賈母らはどっと笑います。賈母は「今回はもう一度じっくりと見てもらうとしましょう。この園がどうして神仙の住むところに比べられますか!」 劉婆さんは笑って「私がこの前来た時は、冬ということで、園内も私どもの田舎と同じく広々とした雪景色でした。でも、ひとたび園に入れば、至るところに飾り灯籠があり、至るところで銅鑼や太鼓、爆竹の音がやまないんですもの。私はびっくりして飛び上がりましたよ。こりゃあ王母娘娘(西王母)の誕生祝の宴じゃなかろうか? これらの飾り灯籠も天上の灯籠じゃなかろうか。私のような婆あでさえ、王母様の住んでいるところだと思ったんですもの、私どもの田舎の人が思いも及ばないのも当然ですわい」と言ったので賈母たちも笑い出します。煕鳳は「ご隠居様は今日は孫たちと一緒にお楽しみですもの、天上の王母様ではございませんか? それに、私たちの園のお嬢ちゃんたちこそ、まさに天上の仙女ではありませんか!」 賈母は「ばかなことを! 天上の神仙と勝手に比べていいものかい? 罪作りで寿命を減らされてしまうよ。この園だって、今はみんなが来ているから何とも思わないけど、前回私が来たときは、やっぱり少なくなったと感じたものだよ。確かに二の嬢ちゃんが去って宝釵ちゃんも出て行ったからね。元宵節が過ぎればめいめいが自分のところに行ってしまい、寂しくなってしまうんだもの、どうして天上の仙宮に比べられよう?」
この時、探春も来ていましたが、賈母の話を聞いて思いました。私たちの家では明らかに一年また一年と悪くなり、落ち目になってきている。このところ慶事が続いているものの、これは人が言うように消える前の一時の光なのだろうか? 今、ご隠居様でさえ、物寂しい兆しを感じていらっしゃる。こう考えると全身に冷や汗が出て、ほかの話は聞かずに園を去るのでした。
こちらでは、襲人、麝月らが急ぎ茶や水を出してきました。宝玉は自ら「老君眉」を賈母に差し出します。賈母は「もう注がなくていいよ。別のところに行って、嬢ちゃんたちがどんな灯籠を作ったか見るとするから」。
一同は多くの星が月を擁するように、賈母を取り巻いて怡紅院を出ました。沁芳亭を過ぎると、大きな頭の獅子灯の一隊が路上に踊り出てきました。賈母は訝しがって、「どうして男の子たちまでが園に入ってきたんだろう。あの払子を持って獅子を誘導している子は誰だい?」と言うので、一同は笑い出しました。鴛鴦は急ぎ眼鏡を賈母にかけさせて言います。「ご隠居様、よくご覧になって。見間違える人ではありませんわ」。 賈母がよく見ると、それは短い袷に赤い靴、頭に二つのあげまきを結った小者で、なんと男の子ではなくて、史湘雲の侍女の翠縷なのでした。賈母は笑って「なんとこのあまっちょが化けていたのかい。男の子の格好が似合うね。おまえの嬢ちゃんはどこに遊びに行ったんだい?」 一同は「あそこに来ているじゃありませんか」。
と、向こうから龍灯の一隊が踊り出てきました。摺袖を着て、足には色鮮やかな布靴を履き、頭に髷を結い、龍灯の前に出てきたのは湘雲と宝琴なのでした。
賈母はやはりはっきりと分からず、笑って「あまっちょたち、はやく雲の嬢ちゃんに言っておくれ。小者たちに混じらないようにってね」。 また振り返って煕鳳を罵り、「おまえも悪ふざけが過ぎるよ。どうして龍灯踊りの小者たちまで園の中に連れてきたんだい? 嬢ちゃんたちが見たらどう思う?」 一同はまた笑って言います。「どうして小者たちですか。あれは雲の嬢ちゃんと琴の嬢ちゃんが、侍書、翠墨、素雲、雪雁、春繊たちを連れて遊んでいるのですわ」。 賈母はやっと分かって、笑って言いました。「なんだ、雲ちゃんのいたずらだったのかい。小さい時から男の子の格好をするのが好きだったけど、全然変わってないんだね。琴の嬢ちゃんまでおかしくされてしまったとは」。
宝玉は湘雲たちが龍灯で遊んでいるのを見ると、走っていきました。賈母は慌てて「宝玉、戻っていらっしゃい!」と言うと、宝玉は「私もちょっと踊って遊んでくる」。 そして龍の頭にくっつき、湘雲、侍書、翠墨らと踊り始めました。賈母は「気を付けなさい、腰を痛めないようになさい」。
劉婆さんは「阿弥陀仏、今日は世間を見させていただきましたが、お嬢様たちまで龍灯で踊りだしたんですね」。 賈母は笑って「劉のお婆さん、笑わないでくださいね。うちの孫たちはみな悪い習慣に染まってしまい、人様が龍灯で踊るのを見ると、男の子の格好をして踊り出すんですよ」。 劉婆さんは笑って「喜ばそうと思ってもなかなかできないことです。宝の坊ちゃんと雲のお嬢様、琴のお嬢様は元宵節に龍灯で踊って、ご隠居様を楽しませてくださるんですもの。本当に孝行なことですよ」。
煕鳳は賈母が喜んでいるのを見ると、自らも宝玉から龍の頭を奪い取りますが、宝玉はなおも龍の尻尾だけで踊っています。鴛鴦、琥珀たちも銅鑼や太鼓を打ち鳴らして加勢します。一同は煕鳳が龍灯で踊っていると聞くと、取り囲んで拍手をし、歓声を上げ、銅鑼や太鼓の音は天を震わさんばかりです。
賈母は笑って叫びます。「鳳ちゃん、さっさとこっちに来なさい。注意しないと腰や足を痛めるよ」。 煕鳳はしばらく踊ると支えられなくなり、賈母が呼ぶのを聞いて手を放し、はあはあと喘ぎながら戻ってきました。平児たちは急いで濡れたハンカチを持ってきます。煕鳳は汗をふきながら、大声で「私は小さい時からとてもいたずらで、龍灯で踊ったり爆竹をしたりもしましたわ。ご隠居様、心配なさらないで。明日は私が花火をつけてご覧にいれますから」。 薛未亡人は「この人の言うのは本当の話ですわ。そうでなければ、鳳ちゃんにやらせるもんですか」。 劉婆さんは「私は若奥様が小さい時に男の子の格好をしているのを見たことがありますが、まったく天上の哪吒太子のようでした」。 賈母は笑って「今ではうちの嬢ちゃんも染まってきたけど、どうやら鳳ちゃんが元凶だったようだね」。 煕鳳は笑って「男の子のまねをするぐらい何だとおっしゃいますの? 盗みをするわけじゃありませんし、いつの日か真の英傑になる日がくるかもしれませんわよ」。 劉婆さんは「なるほど、若奥様は小さい時から男の子のまねをしていたからこそ、こうも腕がおありになるんですな。天下の男も及びもつきませんわい」。
一同は談笑しながらあちこちを歩きました。黛玉の部屋には嫦娥(じょうが)が月に奔る様子を描いた飾り灯籠が揺れていました。その嫦娥は色鮮やかな袖を広げて軽快に舞っています。惜春の部屋のは観世音菩薩で、手には玉瓶を持ち、甘露を施しています。李紋と李綺のは鳶灯と孔雀開屏(孔雀が羽を広げた)灯。邢岫烟が作ったのは「麻姑献寿(まこけんじゅ)」を描いたもので、李紈の部屋のは「三娘教子」のものでした。薛未亡人は「鵲橋仙」のものを持って来させました。賈母は喜んで、藕香榭で夕食の準備をするように命じると、また灯籠に見入るのでした。煕鳳、李紈、尤氏らは急ぎ人を連れて準備をしに行きました。
【補注】麻姑献寿 麻姑は神話に登場する仙女で、西王母の誕生祝の宴(蟠桃会)で霊芝を醸して長生酒をつくり、西王母に贈ったという説話があります。長寿の祝いにこの図がよく描かれます。 |
夕暮れ時になって、賈母と衆人たちはようやく藕香榭にやってきました。煕鳳は賈母を扶けて、狼の皮の座布団を敷いた寝椅子に座らせます。「ご隠居様、ここは広くて明るいし、暖かくて、池の灯籠もきれいですわ」。
賈母らは炉を囲んで暖をとります。外を見ると、池の氷はいまだ溶けず、氷の上にしつらえた灯籠を指さして談笑していると、ふいに池の対面から二人の美人が飛び出してきました。一人は真っ赤、一人は青緑。二人は互いに近づき、夸父(こほ)が太陽を追うかのように、列をなして風を操り、颯爽と白い氷雪の上を滑っています。実に艶やかで美しい眺めです。
賈母は初めびっくりしましたが、すぐに喜んで、「まさに『美人が雪景に氷を滑るの図』じゃないか。どこの部屋の侍女が雪の中を遊びに出てきたのだろう。実におもしろいよ」。 煕鳳は笑って「ご隠居様、よくご覧ください。いったいどこの部屋の侍女でしょう?」 賈母はなおも分からずにいると、氷上の赤と緑の二人は、軽やかに疾走してきました。賈母はようやく、それが湘雲と宝琴であることが分かりました。二人は飛ぶように走ってくると、それぞれが合掌し、賈母に新年のあいさつをします。賈母は大きな声で「早くおいで! もうあのへんを滑るんじゃないよ。紫菱州のあたりは氷に穴をあけて灯籠をしつらえてあるんだからね」。
宝玉は喜んで手ぐすねを引き、すぐに走っていけないのももどかしく、秋紋に「早く私のスケート靴を持ってきてよ」と言いつけます。宝釵は「何を慌てていらっしゃるの? 今から持ってきたって滑れませんわよ。太陽がもう山に沈むのが見えませんの?」 黛玉は「“惜しむらくは美しき疎林に斜陽が掛からず”ですわ。もし三人で雪を滑ったら、あの絵はもっと風雅になるでしょうにね」。
湘雲と宝琴は呼ばれて上がってきましたが、史湘雲は雪の上ですべって転び、全身雪にまみれ、髷も乱れ、顔も汚してしまいました。黛玉は手を叩いて笑い、「雲ちゃんたら、浮浪者になっちゃったわね」。
煕鳳は湘雲を捕まえ、「早く四の妹妹のところへ行って服を着替えましょう。仙女様が濡れ鼠になっちゃったわ!」と言いながら、湘雲を連れて惜春の部屋へ向かいます。惜春も同行しました。
しばらくして、湘雲と宝琴が化粧を済ませて出てきました。空はもう暗くなるところでした。李紈は既に人を従えて夕食の用意を終えていました。賈母は自分の料理から二つを選び、劉婆さんの席に届けさせて、「食べてください。この羊の胎児は、年を召した人が食べると体の骨を暖めるんですよ」。 劉婆さんは一つ摘んで口に運び、「本当によく煮込んであって軟らかく、歯を使わなくともお腹に入っていきましたわい。私どもの田舎では、誰が羊の胎児なんぞ食べましょう。産んで大きく育ててこそお金になりますからな。羊は毎日見ておりますが、初めて食べました」と言って一皿をぺろりと平らげました。賈母たちは食べ終わると口を漱ぎ、お茶を飲みながら劉婆さんと話をしました。一同もめいめいに遊びに行きました。
宝釵はこっそり宝琴を引っ張って「琴ちゃん、いらっしゃい。あなたに話があります」。 宝琴はふりむくと、史湘雲ににっこり笑って舌を出しました。
史湘雲はこれを察知して、急ぎ宝釵の肩にしがみついて言いました。「お姉様、琴妹妹を責めないで。みんな私が悪いの。琴妹妹がとても滅入っていたから、子供に扮して龍灯で踊ったり、スケートをして楽しんだんです。お姉様もご覧になったでしょう、鳳のお姉様さえ踊ったんだし、ご隠居様もお喜びでしたわ。どうして妹妹を責めるの?」 宝釵は笑って「私は、あなたたち二人を一緒にしてはおけないって言っているのよ。このままでは、またどんなことが起きることやら。龍灯は、古来より、女の子が踊るものじゃないでしょう。子供に扮して、龍灯で踊り、スケートまでするんですもの、いずれは子供に扮して縁日に行ってしまうかもしれないわ」と言うと、黛玉が後ろでぷっと吹き出し、笑い出しました。
実は黛玉は、宝釵たちが陰でこそこそやっているのを見て、こっそりと近づいて来たのですが、宝釵の話を聞いて思わず笑い出し、こう言うのでした。「お姉様もあまりに頭が固いわよ。琴妹妹と雲ちゃんが子供に扮して龍灯で踊ったからって、何を心配するの? 私も体が弱くなかったら、彼女たちと一緒に遊んでいるところよ」。 宝釵は嘆息して、「そうは言っても、とても女の子のすべきことでないわ。あなたたちがそんなふうに甘やかすから、琴ちゃんもますますつけ上がるのよ」。 宝琴は笑って「本当はお姉様がいけないのよ。さっさと園を出てしまって、人を憂鬱にさせたんですもの。だから私は史のお姉さんと楽しく一緒に遊んだんですわ」。
宝釵は笑いながら宝琴を叩いて、「私の代わりに、史のお姉さんに姉になってもらいなさいよ」と言い、また、ふりかえって黛玉に「琴ちゃんは見えないところで、ずいぶんあなたを褒めているのよ。私一人が嫌われ者なんだから」。 黛玉は「琴妹妹は少し活発なところがあるから、お姉様も少し押さえつけておくくらいでいいのよ」。 宝釵は笑って「琴ちゃんは小さい時から父母がいなくてダメになったのよ。あなたたちがまた甘やかしたら、このうえどんな問題が起こるか分からないわ」。 黛玉は「何が心配なの? お姉様が注意しなかったところで、せいぜい二人でこっそり縁日に遊びに行くぐらいのものでしょう。まさか、花木蘭、梁紅玉になって戦場に赴くわけでもないでしょう」と言ったので一同はどっと笑います。
【補注】花木蘭・梁紅玉 花木蘭は年老いた父の代わりに男装して従軍し、異民族を相手に勝利して都の民を救ったとされる架空の女傑。梁紅玉は南宋の名将・韓世忠の妻で、夫と共に金軍と戦った女将軍。 |
そばに来ていた宝玉は、これを聞いて「誰が梁紅玉、花木蘭になるって?」 湘雲は「誰だか当ててごらんなさいよ」。 宝玉はちょっと考えると、黛玉と宝釵を指さして「絶対にあなたたちではないな」と言って、次に湘雲と宝琴を指さし、「すると残るのはあなたたち二人。一人が梁紅玉なら一人が花木蘭だね」と言ったので一同はまたも大笑いです。湘雲と宝琴の二人は「宝のお兄様のでっち上げよ。あとで罰を与えなくちゃいけないわ」。
一方、尤氏は、賈母たちがお茶を飲みながら灯籠を見ているのを見て、劉婆さんをつついて言いました。「正月には田舎の人も灯籠を飾るんでしょう。お婆ちゃん、田舎の灯籠飾りのことをご隠居様にお聞かせしてくれないかしら。きっと私たちのところより賑やかなんでしょうね」。 劉婆さんは「賑やかと言えば賑やかですな。田舎の人は風の日も雨の日も働きどおしで年中忙しいですからな。正月は農作業も一段落するので、みんなで一緒に楽しみます。破五(旧正月の五日)が過ぎると、銅鑼や太鼓を鳴らし、飾り灯籠が飾られます。子供たちは紙で頭の大きな兎灯を作り、腹に蝋燭を挿して、庭中を引っ張り回します。旱船踊りをする者は赤い元結(もとゆい)でおさげ髪を編み、赤い小さな綸子の袷を借りて着て、紙で作った旱船に乗って踊ります。金銭棍(民間の踊り)を踊ったり、船を漕ぐ真似をしながら柳蓮柳や蓮花落を歌う者もいて、その後ろにはお尻を丸出しにした子供がぞろぞろ付いてきます。また、麦わらで龍の頭身を作り、麻布をかぶせ、染料で頭と尻尾を染め、体を描いて龍灯を作る者もおります。どうしてこちらのように色鮮やかな緞子で作った獅子灯や龍頭、絹でこしらえた飾り提灯と比べられましょう。もし、これらの絹織物で衣服をこしらえて田舎の娘たちに着させることができたら、つぎはぎをした粗末な小さい袷を着なくても済むんですがなあ」。 巧姐は「お婆ちゃんの話だと、正月はとても寒いのに、田舎のお姉さんたちは毛皮の服を着ないで、あべこべに小さな袷を着るの?」と聞いたので一同はどっと笑います。劉婆さんも笑って「お嬢様はお屋敷でお生まれになり、いくらでも毛皮の服を着られ、山海の珍味を食べられて、栄華富貴を受けているんですもの、田舎の人とは一緒になりますまい。田舎の娘たちは飯も腹一杯食べられず、小さい袷でも着られればいいというもの。こちらのように福を授かっている娘などおりませんわい。もし、お嬢様が将来私たちのところへ来ることがありましたら、きっと分かりましょう」。 板児も口を出し、「僕たちのところには山も川もあるし、鳥の卵を採ったり山鳩を捕まえたりできるし、ガチョウも鴨も鳩もいて、ここの稲香村よりもっといいよ。もしあんたが来たら、魚の捕り方を教えてあげるよ」と言うと、巧姐は嬉しそうに笑うのでした。
劉婆さんが板児を叱りつけようとすると、賈母は「その子の言うのも正しいよ。田舎には風光明媚な田舎の良さがあって、私たちのところより上だろうからね」。 劉婆さんは「何が風光明媚なものですか。街を出ればどこも同じような景色で、どこにこの園のようなところがありましょう。一度入ったら、全てが素晴らしく、右も左も分からないくらいでした」。 薛未亡人が「それはそうね。お婆ちゃんでなくても、私たちが初めて園に入った時も迷ってしまいましたからね」。
こうして話をしていると、池のあちこちに設えた飾り灯籠が一斉に明るくなり、氷が張った池の上に八人の仙人が現れました。ソリの上に蓮の花が敷かれ、その上に色とりどりの飾り灯籠が置かれ、そこに描かれた八仙の姿が照らし出されたのでした。
賈母は眼鏡をかけ、その中の女仙人を指さして、「あれは何仙姑かい? 誰が作った飾り灯籠だい?」と言うと、探春が答えて、「私が侍女たちに作らせた八仙過海です」。 賈母はうなずいて「なるほど、やっぱり三ちゃんの作った灯籠がいいね。夜に水に浮かべたら更に情緒が出たね」。 劉婆さんも笑って指をさして言います。「はて、あれは王母様の仙宮でしょうか? ほれ、八仙様が揃って新年のあいさつにいらっしゃいましたわい。あの道士の服を着て青鋒剣を背負っているのが呂洞賓、あのロバに跨っているのが張果元、あの足が不自由でヒョウタンをぶらさげているのが鉄拐李、あの簫(しょう)を吹いているのが韓湘子でしょう。はれまあ、金龍までが水上で踊っていますなあ。あれらは皆ご隠居様に新年のあいさつに来られたんでしょう」。
【補注】八仙過海 八仙とは中国の民間で広く伝わっている八人の仙人で、漢鐘離・張果老・韓湘子・鉄拐李・曹国舅・呂道賓・藍采和・何仙姑。「八仙過海」とは、西王母の誕生祝に招かれた八仙が、船で渡海して崑崙山に赴いたという伝説で、八仙が船に乗った様子が描かれます。また、八仙が蓬莱山にへ帰る時には、それぞれの得物や技を使って海を渡ったとされ、こちらの様子が絵のモチーフとなることも多いようです。 |
実は、氷上には八仙以外にも、煕鳳が持ってきた金龍があり、口から水を吐いたり、回って踊ることができるものでした。そこには龍女もおり、これは柳毅伝の故事を表しているのでした。
寧国府で送ってよこしたのは「哪吒閙海(哪吒が海を騒がす)」で、哪吒が金龍の背に乗って、龍の両角を握り、水中で遊ぶ様子を描いたものでした。次のは「水漫金山寺」の故事で、山腹に法海和尚が座り、後方には幾多の仙人が立っている様子が描かれています。魚や海老の将兵、亀やカニやハマグリなどの灯籠が池の上を行き来しています。白娘子と青児は手に宝剣を携え、正に天兵と戦おうとしているのでした。ロウソクの影が赤く揺れ、灯籠の光がキラキラと輝いています。
夜も更けると風が強くなり、いっそう寒さが増してきました。煕鳳は賈母に部屋に戻って休んでもらおうとして言います。「明日は花火をご覧になるんですからね。体を冷やして病気にならないでくださいませ」。 賈母は笑って「何を急かすんだい。今日はもっと見たいのに、あんたはそうやって急き立てるんだね。あんたに従わないと、立って待たせることになるから、もっと恨まれるんだろうね」。
尤氏は煕鳳を見ながら笑って言いました。「猿のおしっこを飲み過ぎたもので、今日は猪八戒のおしっこを飲んだのかしら? どうして口のないヒョウタンになってしまったのかしらねぇ」。 煕鳳は尤氏にペッと唾を吐き、笑って罵り、「よくもでたらめを言うわね! あんたの母親こそ猪のおしっこを飲んだんじゃないの! きっとあんたも、生まれてこのかた猪のおしっこを飲まされすぎたもんだから、夫の父母の前でうまく立ち回ることができないのよ。私を崇めて五百両の銀子をよこし、私を師と仰ぐんだったら、あんたを弟子にしてあげるから、明日にもしっかり伝授して、いっぱい猿のおしっこを飲めるようにしてあげるわよ」と言ったものですから、一同は腹をかかえて大笑いです。賈母はハンカチを取らせて涙をふきながら、鴛鴦にお腹のあたりを揉ませるのでした。
鴛鴦は賈母をさすりながら笑って言います。「私、二の奥様に済まないと思っていましてよ。二の奥様が猪のおしっこを飲んだなんて誰が言ったんでしょう。飲んだのは猿のおしっこですわ。考えてもみてください。七、八十歳のご隠居様が、夜も更けたのに、こんな池の上の亭にいつまでもお座りになって、また風に吹かれたら病気になってしまいますわ。ご隠居様が万が一病気にでもなられたら、私たちは昼も夜も看病で全く休めなくなります。私は暇が欲しいんですから、さっさとご隠居様に帰っていただきたいのに、ご隠居様はかえって乗り気になられているんですもの。でも、二の奥様が猿のおしっこをたっぷり飲んで、私の代わりに言っていただきました。このままご隠居様がお帰りになれば、きっと病気になることもないでしょうし、私も煩わしいことがありません。なのに、二の奥様はかえって皆さんにからかわれているなんて、なんて可哀想なんでしょう」と言ったので、一同はまたどっと笑います。
煕鳳は口をとがらして「鴛鴦ちゃんが暇が欲しいのなら、私も仲間にしてよ。なんだ、鴛鴦ちゃんも猿のおしっこを飲んだのね」。 そして鴛鴦に向かって拱手の礼をして、「親愛なる鴛鴦のお姉様、とにかくご隠居様にお帰りになるよう言ってください。これもみな、私と珍さんの大奥さんがいけないんです。あんな金龍や《水漫金山寺》なんて持ってきたから、ご隠居様が帰りたくなくなっちゃったんです。私の猿のおしっこは今あなたに全部飲んでいただきましょう。明日、ご隠居様が病気にならずに健康でいられましたら、あなたも暇ができ、私も暇ができ、私たちはご隠居様のお供をして百二十歳まで楽しめることでしょう。寒くなってきましたから、鴛鴦のお姉様にはもっといっぱい猿のおしっこを飲んで、さっさとご隠居様に駕籠に乗っていただくよう言ってください。私たちも解散しなければいけませんし、明日は元宵の佳節で、私たちはご隠居様に付き添って花火を見るんですから」と言ったので、人々は笑いながら立ち上がりました。
賈母も立ち上がって言いました。「この猿め、やっぱりおしっこを飲んだとみえる。よく口が回るもんだね。うちの鴛鴦までもおかしくされて、私の前でも暇が欲しいとか言っているじゃないか」。 一同は笑って「ご隠居様が可愛がっているからこそ、そんなことを言うんですよ。彼女も本心では暇が欲しいなんて思っているもんですか!」 劉婆さんは「私も本当にこちらのお屋敷が好きです。こんなに気っ風がよいうえに、お嬢様方主従がこんなに気さくに冗談を言い合って、しかも、実に礼儀をわきまえていらっしゃる。ご隠居様も本当に大きな幸福を授かっていらっしゃいますなぁ」と言ったので賈母は声を挙げて大笑いするのでした。
早くも琥珀と珍珠が羊角灯(胴を羊の膠で作った提灯)を持ってきて、煕鳳、鴛鴦、尤氏らは賈母を扶けて駕籠に乗せました。一同は賈母の駕籠を取り囲んでからそれぞれ帰りました。続きを知りたければ次回にて。