紅楼夢人物図解

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(1)賈宝玉

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*「電視連続劇紅楼夢」の欧陽奮強氏

賈家の混世魔王、もとい、紅楼夢の主人公、賈宝玉。

容貌は美しく、齢官や史太君が侍女や姫君と見間違えたこともありました。清の統治下では弁髪が義務づけられていたはずですが、宝玉は長髪であり、髪型については本文中に詳細な記述(下記参照)があって、髪を編んで真珠を通し、金の根付けをしている様はイラストでもよく分かります。

衣装については、頭上にかぶった冠(七宝象嵌の紫金冠)・頭にまいた鉢巻・頸から下げた通霊宝玉などが特徴でしょうか。山東画報出版社「紅楼服飾」によれば、髪を束ねた冠(束髪冠)は明代に宮廷内部から貴族の子弟に広まったものとのことです。

平凡社「北京風俗図譜1」によると、いわゆる長衣(あわせは襖または袍、ひとえは衫または大衫とよぶ)の上に上衣(チョッキ型のカン肩か長袖の馬褂児)を着たのが清代の男子の服装だそうで、宝玉は典型的な清朝貴族の衣装を着ていることになるようです。

通霊宝玉は赤子の口に入っていたにしては「デカすぎる」ものが多いですけど、小さく描くと見づらいからでしょうか?


本文中の記載


初登場時の宝玉の服装
南海出版公司「図解紅楼夢」より

服装について

「頭には髪を束ねた七宝象嵌の紫金冠をかぶり、眉すれすれに双竜が珠を争う図を金糸で刺繍した鉢巻をしめています。群蝶が花に戯れる図を深浅二色の金糸で刺繍した緋色の細袖の長衣を着け、それを五色の糸で花模様を縫い取った長い総のある腰帯で結び、その上から青地に八つの円形模様を浮かした日本産繻子の上衣をはおり、黒緞子白底の小さな礼式用長靴をはいています。頸には金のミズチの瓔珞を下げ、五色の絹糸で美しい玉を下げています」(第3回・宝黛初逢時)

「頭のまわりを一回りしていた短い髪を、全部小さな弁髪に結い上げて赤紐で束ね、頭のてっぺんにまとめて一本の大きな弁髪に編んであります。それに四個一つなぎにした大真珠を散りばめ、黄金の八宝を根付にしています。体には花模様を散らした桃色の普段着の長衣を着、さっきと同じく首輪・宝玉・寄名鎖・護身符などを下げています。下は花模様を散らした樺色の綸子のズボン、錦で縁どった模様つきの靴下、厚底の赤い短靴を穿いています」(第3回・着替え後)

絹糸を編み上げて玉をはめこんだ紫金の冠をかぶり、宝珠を奪い合う双竜の金具をつけた鉢巻きをしめ、茶褐色の地に登り竜を刺繍した白狐の毛皮の筒袖の長衣を着用し、五色の蝶と鳳凰を刺繍した腰帯をしめ、首からは長命鎖・記名府、そして彼が生まれた時に口中に含んでいたという例の宝石を下げています」(第8回・宝釵を見舞った時)

束髪の銀冠をかぶり、海中より躍り出た二匹の竜の図柄を刺繍した鉢巻をしめ、白い蟒(うわばみ)の模様のある筒袖を着け、真珠を連ねた銀の帯をしめ、顔は春の花の如く、目は漆を点したような宝玉の姿」(第15回・北静王と初逢時)

緋色の地に金糸で蟒(うわばみ)を刺繍し、狐の脇下の毛皮を裏打ちした筒袖を着て、そのうえに総で縁取った石青色の貂の皮ごろもをはおっていました」(第19回・襲人宅訪問時)

「宝玉は家にいる時は冠はかぶりませんので、総角(あげまき)にしたりせず、ただ周りの短髪を小さな弁髪に編み、赤紐で結びます。そして頭のてっぺんから弁髪の端まで四つの真珠を並べ、その下に金の根付けを下げます」(第21回)

「宝玉は銀紅色の紗の衫子(ひとえ)を着用し、しどけない格好で眠っており」(第36回)

「下にはただ着古した赤い綸子の短い上衣を着て緑の腰帯をしめただけで、膝のあたりには青緑色の紬地に模様を散らしたズボンをのぞかせ、その下に金糸で縁取り一面に刺繍をした綿紗の靴下が見え、胡蝶に落花をあしらった刺繍入りの短靴を履いています」(第45回)

茄子色の羅紗地に狐の毛皮を裏打ちした長上衣を着ただけで、その上からラッコの毛皮を裏打ちした小鷹の肩掛けを重ね、腰帯を締め、玉針の蓑を着、金藤の笠をかぶり、沙棠(さとう)の木靴をはくと、急いで蘆雪庵へ出かけました」(第49回)

「身には天馬皮を裏につけた茘枝(れいし)色の羅紗地の細袖上衣を着込み、猩猩緋(しょうじょうひ)の羅紗地に金糸で五彩の刺繍をし、群青色の妝(しょう)緞子で縁飾りをつけた総つきの上衣を羽織っています」(第52回・冬着)

「着ているものはといえば、松花色の綸子の長上衣1枚だけで、その内側に血のような緋色のズボンがのぞいています」(第78回・この赤いズボンは晴雯が自ら仕立てたものでした)

毛皮を裏打ちした釣鐘マント形の長上衣」を「狐の脇下の毛皮を裏打ちした筒袖に着替え、玄狐(くろきつね)の腿毛皮を裏打ちした羽織を着て史太君を出迎えました」(第94回・通霊玉を無くした時)

容貌について

「その面は中秋の月のよう、色は春の暁の花のよう、鬢(びん)は刀で切ったよう、眉は墨で描いたよう、頬は桃の花びらのよう、瞳は秋波のよう。怒るときにも笑っているかのごとく、目をむいて睨むときにも風情があります」(第3回)

「面は白粉をつけ、唇は紅をさしたよう、眼差しには愛嬌がこぼれ、口には笑いを含んでいます。生まれながらの風流なおもむきは眉じりに表れ、平素のくさぐさの思いは目尻に集まっています」(第3回)