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孤高の才女、紅楼夢のヒロイン、林黛玉。
体は華奢で病弱、「風に揺れる柳」に例えられる彼女は、弱々しくも気品溢れるイメージが見て取れます。黛玉の普段着についての記述は第89回にあるのみで、各イラストでは髪を雲髷(雲形髷)に結い、ゆったりした上衣を着た彼女の姿が描かれています。
各本の紹介イラストではやはり花鍬を持った図(第23回の「黛玉葬花」)が多いです。
私が中国で見た、書画の類によく使われる場面としては、黛玉と宝玉が石に腰掛けて本(西廂記)を読んでいるシーン、黛玉が宝玉に琴を教授しているシーン、病床の黛玉が詩稿を火にくべるシーン等がありました。
古来より中国では二つの美人タイプがありました。楊貴妃のような豊満な美人(牡丹や桜に例えられます)と漢の趙飛燕のような痩せ形の美人(楊柳に例えられます)で、紅楼夢でも薛宝釵は前者、林黛玉は後者のタイプに該当します。
ただし、中国人はどちらかというとほっそり形の美人を好んだようで、ある国王が細腰を好んだために後宮の女性たちは痩せようとして食事もろくろくとらなくなった等という話が史書にもあるそうですし、物語のヒロインも殆どが柳腰の美人です。そもそも中国人ってあんまり太った人がいないなあ…
「黛玉は雲型模様を透かせて縁を取り金糸で刺繍した赤い羊皮の小さな長靴に履き替え、表が緋色の羽紗で白狐の毛皮を裏につけた引回しを羽織り、その上からキラキラ光る緑色の二つの環と四合の如意とを飾りにつけた瑠璃色の組紐をしめ、頭からすっぽり雪帽をかむりました」(第49回・雪見の時の衣装)
「黛玉は薄藍色地に刺繍を施して短毛の羊皮を裏打ちした長上衣を身にまとい、その上に銀鼠(しろりす)の坎肩(そでなし)を着用、髪は普段の雲髷に結い上げ、純金の平簪を一本挿しただけ。腰には楊妃色(ときいろ)地に刺繍を施した錦のスカートをはいています」(第89回)
「顰めたようでそうでない二すじの眉根をきりりと逆立て、ねめつるようでそうでない両眼をかっと見開き、しなやかな頬を怒りでけいれんさせ、あでやかな顔をむきにして」(第23回)