この説について紅学界では激しい争論がなされ、馮其庸、蔡義江氏らの反駁を受ける一方で賛同者も見られ、欧陽健氏は2003年に持論の集大成となる「還原脂硯斎」を出版しました。
素人紅学さんが掲示板に寄せていただいた情報をお借りすれば、反論に対する反論をも含むようで、「脂硯斎の存在を証明する本であった裕瑞の随筆「棗窓閑筆」について検討し、書体や清代の資料からこれが裕瑞のものではないと断定し、 脂硯斎が本当に存在していたかどうか、疑問であるとします。また、彼が書いたといわれている紅楼夢の批評を検討し、そこに現れる言葉、康煕帝の名前「玄」を避けていないことから、清代の人ではないとしています。また、曹雪芹が紅楼夢の作者であるとの根拠とされている詩文集や随筆も検討して、根拠にならないと断定しています。欧陽健氏の結論としては、脂硯斎の原本は1911年に刊行された有正書局版の紅楼夢であり、そこに付された注が基になっているというものです。この有正書局版は版元である荻保賢が入手した80回までの写本であり、発行に際して、注を募集し、この注を付けた上で発行したというものです」。
その後の論争の行方(大勢)について御存知の方は御教唆いただければ幸いです。なお、伊藤漱平先生は「伊藤漱平著作集」の中で「人をして拍案驚奇せしむる底の内実を欠く」と一蹴されています。