金沢&能登ルポ

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○調査日:2001年4月28日~30日,2005年9月24日~26日
金沢編] [能登編]
2001年現在の金沢駅
2001年現在の金沢駅

翌日、響子さんは金沢駅から観光バスに乗って輪島を目指し、それを五代君がタクシーで追いかけることになります。残念ながら原作に描かれている金沢駅の駅舎は、北陸新幹線工事に伴って既に解体されてしまいました。現在は、大屋根やシティゲートが完成し、全く違う光景となっています。

なお、この観光バスについては、くろべさんがレポート・めぞん一刻で詳細な検証をされており、金沢駅発の「のとかんこう1号」だったことを明らかにしています。くろべさんのレポートに従い、バスと同じルートを走ってみました。


(5)千里浜
→(参考サイト(「のとねっと」)

響子さんと五代君は再び千里浜(ちりはま)でニアミスします。
なぎさドライブウェイで知られる砂浜で、千里浜の北端に響子さんが立ち寄った千里浜レストハウスがあります。めぞん一刻homepageによれば、原作には改装される前のレストハウスが描かれているそうで、現在のものとはだいぶ異なります。

五代君が落し穴に落ちた場所は、レストハウスから浜辺に出て、砂浜を北に少し歩いたところです。ただしレストハウスの背景には原作のように山は見えません。また、「管理人さーん」と叫んで走ってくる五代君の背後には、原作では海に突き出た崖が描かれていますが、実際は延々と砂浜が続いています。

千里浜レストハウス
千里浜レストハウス
千里浜
五代が落し穴に落ちた場所

(6)妙成寺  →(公式サイト
響子さんが前の停車地で降りたことも知らず、五代君は日蓮宗の総本山・妙成寺(みょうじょうじ)を訪れます。
五代君が「おっかしーなー」と考えながら登っている階段は、めぞん一刻homepageで指摘されているとおり、ここから下がった仁王門前の石段だと思います(以前は五重塔前の石段と書いていましたが訂正します。どちらも微妙に違うのですけど)。ただし、原作のような整った石段ではなく、石を敷き詰めたでこぼこした石段です(写真参照)。

妙成寺五重塔
妙成寺五重塔

結局、五代君はバスの前で響子さんを待ちましたが、実際に妙成寺前のバス駐車場から眺めてみると、五代君の後ろに描かれている土産物屋は妙成堂という店だと思います(ただしイメージはかなり異なります)。

五重塔前の石段
五重塔前の石段
バス駐車場からの眺め
バス駐車場からの眺め

(7)金白館は?
実は高橋留美子さんは実際に金沢~能登を旅行されています。「語り尽せ熱愛時代」に次の対談があります。

高橋 最初はスタッフたちと尾道へ行き、金沢のほうには一人だけ連れてまいりまして、最終的には輪島で独りになったんです。
平井 独り旅には慣れているんですか?
高橋 生まれて初めてです。でも、独り旅は二日くらいだったので…
平井 独りでブラブラ歩きなど?
高橋 機動力が全然ないから、本当の徒歩なんですよね。ただ茫然と歩いて…
平井 タクシーを雇うということはしなかったんですか?
高橋 タクシーなんか通っていないんですよ。
平井 宿で頼めば来ると思いますけどね。そうすると、行動半径はあまり広くなかったんですね。
高橋 狭い所だったので、歩いている間に覚えられましたけど。

上のコメントから「輪島近辺の交通不便で辺鄙(へんぴ)な場所」というのが浮かんできます。響子さんは途中でバスを降りて温泉街に行きましたが、高橋留美子先生は輪島まで行ったわけです。
実際、原作で千里浜に向かう途中の風景に、妙成寺より先の機具岩(はたごいわ)近くの風景、「同行二人」の扉絵にはその先にある関野鼻(せきのはな)らしき風景が描かれています(MLのくろべさんの情報)。

機具岩近くの風景
機具岩近くの風景
関野鼻
関野鼻

では、実際に高橋留美子さんが滞在したのはどこなのでしょう?
原作では「海と川に挟まれ、山を背負った温泉街」が描かれています。1回目の調査では曽々木・真浦に当たりをつけ、輪島から珠洲、さらに内浦まで海岸沿いに走ってみましたが、残念ながら該当する地形も金白館に似た建物も見つけられませんでした。

響子さんが温泉街についた場面では、浴衣姿に下駄で闊歩する宿泊客の姿が描かれていますが、能登半島でそういった姿が見られる大きな温泉街は和倉温泉しかないそうです。
しかし、和倉温泉の海岸沿いは高級ホテルが押さえており、和風旅館は街の中に点在しています。めぼしいところを1時間半ほど歩いてみたのですが、全く見当違いの感が残りました。
輪島近辺には原作に描かれているような純和風の大きな民家が多く、やはり雰囲気的には近いような気がしました。

高橋留美子先生の泊まった宿については、初めての独り旅で行き当たりばったりの宿に飛び込むということは考えられませんので、「鹿島屋旅館」同様に旅行代理店等で申し込みをして出かけたものと思われます。
つまり、輪島近辺で旅行代理店でとれる宿(日観連加盟、JTB協定旅館など)の中に答えがあるような気がします。もちろん「鹿島屋旅館」のように近くの建物をモデルにするケースも十分に考えられます。


今回の2回目の調査では、前回の結果を踏まえ、候補地を次の4ケ所にしぼって重点的に調査をしました。

(1) 羽咋郡志賀町近辺

原作に従えば、響子さんは千里浜~妙成寺でバスを降り、金白館のある温泉街に向かっています。高橋留美子さんが輪島に行く途中で一泊したとは考えづらいのですが、あえてその可能性を探れば、中間地点になる志賀の郷温泉、能登金剛温泉、旧富来町の旅館・民宿などが該当すると思われます。
あっくんさんから情報をいただいていた能登金剛温泉は通行止のため行けませんでした。他はひととおり見てみましたが、該当する建物も地形も見つけられませんでした。

(2) 輪島市街

輪島の市街地にも数多くのホテルや旅館がありますが、どうしても視界にビルが入り、また交通至便で、高橋留美子さんの滞在地や金白館のある温泉街とはイメージ的に異なります。そのため、市街地から少し離れた旅館(「ねぶた温泉海游能登の庄」、「割烹旅館城兼」など)を主に調査してみましたが、周囲を含めて同じ地形・建物は見あたりませんでした。

あえて言えば、市街地にありますが、「ホテル高州園」の向かいにある「うるしの工房・輪島塗 太王」が(古民家ではないものの)構造的には金白館と似ているようでもあり、20年前は立て替えられる前の建物だったと仮定すれば、候補となりえるかな?と思いました。「ホテル高州園」の高い階の部屋から見れば、おそらく構図的にも金白館と同じになりますので。ただし、地形的には原作の温泉街とは合致しません。
(「うるしの工房・輪島塗 太王」は平成元年に建立されたことが分かりましたので該当外となりました)

輪島塗 太王
輪島塗 太王

(3) 輪島市曽々木・珠洲市真浦

高橋留美子先生が乗ったと思われる観光バス(のとかんこう1号)は、実は輪島が終点ではなく、曽々木を経由して真浦まで行きます(曽々木と真浦はトンネルを隔てて隣接しています)。このため以前から最有力の候補地としていました。

まず、曽々木海岸には、数多くの旅館・民宿が密集していますが、金白館のモデルとしてはどれも今ひとつでした。その代わり、金白館と造りの似た民家を幾つか見つけてきました。
次に、真浦海岸には、3件ほどのホテル・旅館がありますが、「能登観光ホテル」が御覧のとおりの外観で、今回の調査した中では最も金白館のモデル候補となりえるかな?と思いました(1階のポーチが余計ですが)。
ただし、地形的には曽々木・真浦とも原作の温泉街とは合致しません。

曽々木の民家
曽々木の民家
能登観光ホテル
能登観光ホテル

(4) 輪島市大沢

「輪島近辺の交通不便で辺鄙な場所」で宿泊地を探してみると、輪島市大沢町の旅館(「田中屋旅館」)も該当します。大沢町は海岸沿いに古民家が密集していました。「田中屋旅館」は金白館とは若干異なるようですが、金白館のような建物はあちこちにありそうでした(駐車場がなく、詳細には調べていません)。

ただし、大沢町に行く公共交通機関は(たぶん)なく、輪島市街から車で20分ほどかかります。輪島からタクシーを走らせないと行けない宿をわざわざ利用するのは不自然に思えます。また、地形的にも原作の温泉街とは合致しません。

田中屋旅館
田中屋旅館

今回の調査でも、残念ながら「金白館」および温泉街を特定することはできませんでした。旅館については、この20年間に姿を消した可能性もありますし、能登半島以外の宿をモデルにした可能性もあります。また、温泉街に該当する地形は現在まで全く見つかっていないことから、金白館と温泉街は分けて考えたほうがいい(それぞれ別の場所にある)のかもしれません。

今回はここまで。今後とも状況証拠を積み重ね、ある程度の確証が得られたら、また調査旅行を敢行したいと思っています。皆様からの情報提供も随時お待ちしておりますm(__)m