2011年2月アーカイブ

紅楼夢関連施設を探していたら、また幾つか見つけましたのでご紹介します。

(1)唐山曹雪芹祖籍文物展覧庁(唐山市)
曹雪芹の原籍として遼陽・豊潤・鉄嶺・武陽説がありますが、遼陽には曹雪芹記念館があり、武陽(南昌市)では曹雪芹原籍記念館が建設予定なのに対し、豊潤(唐山市)には曹雪芹祖籍文物展覧庁がありました。あまり詳しい情報は分かりませんが、住所は「豊潤県豊潤鎮西街26号文物管理所」、曹雪芹の原籍が豊潤にあったことを示す碑刻等の資料が50平米の建物内に展示されているようです。
唐山大地震(1976年)で有名な唐山市は北京にほど近く、和諧号だと1時間程度で結ばれています。

http://www.51766.net/img/cxzjwwzlt/

(2)普福禅寺(蘇州市)
紅楼夢第1回に登場する十里街・仁清巷の葫芦廟のモデルは山塘街・青山橋浜の普福禅寺とされているそうです。宋代に建設された普福禅寺は1958年の大躍進の時に破壊されましたが、2009年7月に再建されました。再建に合わせて紅楼夢の十二の場面を石板に彫刻した「紅楼十二幅図景」が設置されているそうです。

葫芦庙5月重现 "红楼十二图"装点普福禅寺(中文)
http://www.subaonet.com/html/cul_news/200924/IJ89ACDK24FAIDI.html

それから、以前ご紹介した江寧織造府博物館(南京市)はいまだオープンしていません。資金不足で頓挫しているとの噂もありますが、いったいいつ開館するのでしょうか。

江寧織造府博物館の公式サイト(中文)
http://www.jnzzfm.com/index.asp

book019.jpg昨年11月に刊行された合山先生2冊目の紅楼夢専著です。ようやく読了しましたので紹介します。
タイトルがタイトルだけに恐る恐る読み始めたのですが(^^;、合山先生は本気でした。

性同一障碍害は日本でも近年知られるようになりましたが、当時も認知されていなかっただけで障碍者はいたはず → 宝玉の風変わりな言動や志向は、彼が性同一障碍者だったとすれば合理的に解釈できるのではないかという仮説から、作中の描写を性同一性障碍の診断基準に照会したり、実際の障碍者の方や医療関係者に意見を伺ったりしながら推察されています。

例えば、宝玉が少女を賛美し、交じって遊ぶのを好み、一緒に暮らす女性たちに性欲を示さず、女性の持ち物や化粧に強い嗜好を示すのは宝玉の内なる性が女性であるためであり、宝玉のモデルである曹雪芹こそが性同一性障碍者であり、宝玉が立身出世や社会との交わりを嫌い、最後に出家するのは性同一性障碍による社会不適合性を意識した結果であり、紅楼夢の執筆動機つまり非現実的な大観園を作中に出現させたのは、当時社会に認知されていなかった障碍者として現実の苦悩や悲嘆から脱却することを願ったものという具合です。

紅楼夢の執筆動機は一般には取り潰しにあった自家の冤罪をそそぐために書かれたものとされていますが、合山先生は作中で家中の悪事を暴露したり、元春の省親や大観園での生活など全く現実性のないものを描く理由にはならないことから、これには全く反対しています。

前作の「紅楼夢新論」で紅楼夢の仙女崇拝小説であると発表された時には、伊藤先生も執筆動機として成り得ないとして反対されていましたが、今回の説が広く認知されるかは正直疑問ですが、相当の説得力を感じました。まだまだ紹介の足りない部分がありますので、是非御一読をオススメします。
--------------------------
『紅楼夢』―性同一性障碍者のユートピア小説
刊行 2010年11月
著者 合山究(九州大学名誉教授)
出版 吸古書院
定価 7000円+税

これまでの訪問者

    ありがとうございます。あなたは
    人目の訪問者です。

最近のコメント

  • 平山さん: 平山@頁主です、はじめまして。 インストールの画面は全てスキャンしてあるのですが、ごめんなさい、まとめている時間がありません。ただ、インストールする場所と名前を指定→シリアルコード入力→完了という流れ 続きを読む
  • ひむろとしつぐさん: 初めまして、氷室というものです。 香港で「再續紅樓夢」というゲームを買ったので 色々とネットサーフィンをしていたら、こちらに来ました。多分、これと同じだと思いますがプレイできません。シリアルIDを入力 続きを読む
  • 夕陽さん: メンテナンスの終了、ご苦労様でございました。 平山さんの仰るように『曹雪芹小伝』9月26日にe-honに注文しましたところ、昨日の10月13日やっと届きました。 《原注》や【訳注】があるので、比較的に 続きを読む
  • 平山さん: (夕陽さんと私の掲示板の投稿をブログに転載しました) 今回の日本語訳「曹雪芹小伝」の底本は1984年に刊行された同著の第2版であり、全33章+付録3篇の全訳とのことですので内容的には曹雪芹新伝の方が新 続きを読む
  • 夕陽さん: 日訳「曹雪芹小伝」発売の情報ありがとうございました。 実は8年前、友人が北京からのおみやげに「曹雪芹新伝」(外文出版社・1992年第1版)を買って来てくれたので、辞書を引きっぱなしで訳し始めましたが、 続きを読む
  • 平山さん: >夕陽さん コメントの承認が遅れて申し訳ありませんでした。 夕陽さんもいつの日か殷墟に足を運べるといいですね。 安陽はいかにものんびりした地方都市といった印象でしたが、あちこちで大がかりな工事が行われ 続きを読む
  • 夕陽さん: 平山さん、お帰りなさい。 北京西駅-安陽間の和諧号の具体的な時間や、その他参考事項、ありがとうございました。私も殷墟には是非行きたいと思っていますが、いつになることやら・・・。 殷の門は、まさに鳥居で 続きを読む
  • ほーめいさん: 御無沙汰しております。 老婆心ながら、「周一」は月曜日の意味で、口語でもよく耳にするので、私はなるべく「星期」は使わないようにしています。一昔前のような語感があるのかなあ、と見栄を張っているだけですが 続きを読む
  • 夕陽さん: 平山さん ありがとうございました。 公式サイトには確かに「中国文字博物馆计划2009年年底正式开馆。」と記されていました。 ネット検索が相変わらず“へた”で、不自由してます。(^-^) 私も殷墟には昔 続きを読む
  • 平山さん: >夕陽さん お久しぶりです。 曹雪芹記念館は全部で3つ、北京・南京・遼陽にあります。 遼陽の記念館は「曹雪芹の原籍=遼陽」説に基づいて関連資料を展示したものと聞いており、下記のサイトによれば、96年に 続きを読む

このアーカイブについて

このページには、2011年2月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2010年11月です。

次のアーカイブは2011年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。