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第1部は源氏物語と中国小説のヒロインの比較、第2部は源氏物語と紅楼夢の比較となっています。分量的には第1部が2/3を占めています。
で、源氏物語と紅楼夢の比較についてですが、「直接の影響関係」はないと前置きしながら、新奇性・艶の世界・悲運・シンボリズムといった類似点があると論じています。紅楼夢の概説に続いて各論となり、光源氏と賈宝玉、紫の上と林黛玉、六条院と大観園とを対比させて論じています。機会があれば読んでみてください。
ひとつ難点を言えば、宝玉をめぐる女性関係という観点から、黛玉の悲劇性を際だたせるために、宝釵はライバルの彼女を陥れるために徹底的に策をめぐらす悪女であったように述べているのは同意できませんし、湘雲や襲人などに対する一面的な見解も肯えません。中国のかつての紅楼夢観を思い出してしまいました。
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