「紅楼夢の殺人」を再読して

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book014  芦辺拓氏の「紅楼夢の殺人」を久々に再読しました。
この本のあとがきにも書かれているのですが、芦辺氏は執筆に当たって本サイトを参考にしていただいた(たぶん人物や項目の検索・整理に利用いただいたのだと思いますが)そうで、2004年の発刊の際にはお礼として本書を寄贈いただきました。このような個人的なサイトが多少なりともお役に立てたことはいまだに光栄に思っています。

2007年に単行本化された際にはすぐに購入しましたが、井波律子先生の解説などには何度も目を通していたものの、本文は数年ぶりに読み返してみた次第です。すでにいろいろな方が書評を書かれていますが、私もあらためての感想を述べてみます。

物語は元春妃の省親に始まり、宝玉と姉妹たちが入った大観園で次々に不可解な殺人事件が引き起こされ、頼尚栄と宝玉が謎の解明に立ち上がるというストーリーです。基礎となる場面設定や再構成されたエピソードなどには紅楼夢の世界観が緻密なまでに再現されており、大半を占めるオリジナル部分も違和感なく読むことができます。紅楼夢を知らない方には人物関係を理解するまではやや骨が折れるかもしれませんが、テンポもよく、すぐにぐいぐいと引き込まれていくことを受け合います。

宝玉の性格を改変せざるを得なかったところは違和感を覚える紅楼夢ファンがいるかもしれませんが、最後の謎明かしに続いて明らかになる(紅楼夢ならではの)核心部分にはやはり圧倒されます。芦辺氏が長い構想期間と周到な下準備のうえに苦心して生み出した作品というのも頷けます。中国に「公案小説」なるものがあったことも本書で知りました。

この書を機会に原作を読んでくれる方もいるようですし、紅楼夢に関する質の高い二次作品を世に出したいただいた芦辺氏には、日本における紅楼夢の知名度アップを願う一ファンとして本当に感謝しています。

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