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大観園は曹雪芹が創造した虚構であり、数多くの古典の庭園を総合したものであるとする説が大勢を占めていますが、モデルが実在するとする説もあり、これは大きく南方説と北方説に分かれます。

南方説の代表は清代の詩人の袁枚(えんばい)であり、その著書「随園詩話」の中で「いわゆる大観園は、即ち余の随園なり」と記しています。また、明義(曹雪芹の親友であったとされる明琳のいとこ)も「其のいわゆる大観園は、即ち今の随園の古址である」と記しています。
実は、南京で江寧織造の職にあった曹雪芹の一家が追放されたのち、隋赫徳(ずいかくとく)が後任となったのですが、彼も数年で家産没収となり、その後、袁枚が隋赫徳の所有していた隋公園(つまり曹家の花園)を買い求めて復興し、随園と称したという経緯があります。つまり、随園は曹雪芹が若き日々に慣れ親しんだ家園であったわけです。

北方説の代表は紅学家の周汝昌氏であり、「恭王府考」(1980年)を著して、大観園のモデルは北京の恭王府(花園)であるとしました(ただし、和珅の邸宅として建てられたのは、曹雪芹の死後であるとされます)。他に、趙国棟編著「紅楼夢之謎」では、大観園の規模や情景から円明園をモデルとする説が紹介されています。

曹操は言わずと知れた三国時代の英傑ですが、曹雪芹の祖先は曹操であるという説があります。「紅楼夢懸案解読」によれば、以下のようなことになります。

康煕年間に編纂された「江寧府志」と「上元県志」という書物に、共に「曹璽伝」があり、彼は宋の武恵王・曹彬(そうひん)の後裔とされています。曹璽は曹雪芹の曾祖父です。

また、曹彬は河北省霊寿県の人とされていますが、「魏志」によれば、曹袞(曹操の第11子)が中山王、曹彪(曹操の第7子)の子の曹嘉が常山郡定真県の王に封じられた(ともに現在の河北省)ため、曹彬も曹操の後裔である可能性があるというものです。

つまり、曹雪芹が曹彬の後裔である可能性があり、曹彬が曹操の後裔である可能性があるため、曹雪芹は曹操の後裔である可能性があるという論法です。ある意味、荒唐無稽な説ですが、ロマンのある話ではありますね。

柳湘蓮は、自分が婚約を破棄した尤三姐の自刎を目の当たりにし、道士について出奔するという結末を迎えています(第66回)が、曹雪芹の原意では、第81回以降で再登場することになっていたとする説があります。

岩波文庫第8巻の解説で、松枝先生は次のように書いています。
第1回の「好了歌」の注釈に「たとえ厳しく教え導きたりとも、後日手に負えぬ子にならぬとは保しがたし」とある一句の脂評に「柳湘蓮ら一群の人を指す」とある。とすれば、湘蓮は後に緑林の徒になったのであろうか。
緑林の徒とは、山賊強盗を渡世とした輩(つまり盗賊・匪賊)のことです。

探佚学により柳湘蓮は出家後に緑林の徒となったものと推定したのは周汝昌氏(「紅楼夢新証」)であり、さらに梁帰智氏は、湘蓮は緑林の徒となったのち、尤三姐の仇に報いんとして、同じく尤二姐の仇に報いようとする張華と手を結んで煕鳳に復讐を果たすという独自の推論を展開しています(「紅楼夢懸案解説」より)。

しかし、太虚幻境に還った尤三姐と、道士に導かれて仙界に戻った柳湘蓮がついに結ばれるという結末がもっとも美しいことから、湘蓮の再登場はないとする考え方もあります(私もこの意見に賛成です)。

「曹周本」では、江南に向かう途中で窮地に陥る煕鳳と鴛鴦を湘蓮が救い、鴛鴦と結婚するという展開を見せましたが、さて「紅楼夢新補」ではどうなるのだろう?(まだまだ先でしょうが...)

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