序文によれば、作者の胡楠女史は12歳で紅楼夢を読み、15歳で続作を書き始め、27歳で三稿を経て出版に至ったそうです。紅楼夢の続作者としては最年少であり、内容も極めて成熟したものであると紹介されています。
おそらく現代版の続作に共通していると思いますが、ストーリー展開や各人の結末は探佚学に基づいたものになっています。「曹周本」と「夢続紅楼」に限っても、香菱・迎春の死、黛玉の死と宝釵との結婚、探春の遠嫁、襲人の結婚、元春の死、惜春の出家、寧栄府の破滅、獄神廟、煕鳳の死、巧姐の受難、賈蘭の科挙及第、宝玉の貧窮と出家、警幻情榜といった展開はほぼ共通です(細部は相当に違いますが)。
ただし、そこに至る過程や間隙、探佚学でも諸説分かれる事項については作者の腕の見せ所といった感じで、現行本では生かし切れなかった伏線を上手に拾ってまとめており、いくつもの仕掛けが用意されていて楽しめました。
例えば、曹周本・夢続紅楼ともに宝玉が家を留守にしている間に黛玉が亡くなっています(テレビドラマもそうでしたね)が、「曹周本」では、黛玉は賈母が宝玉との結婚を考えていることを知らされますが、その後、宝玉と宝釵の結婚について元春妃のお声がけがあり、やむなく「甄」宝玉と結婚させられることを知って絶望して亡くなります。「夢続紅楼」では、趙氏が宝玉を陥れるために馬道婆と謀って、黛玉や侍女らとの淫行の噂をばらまき、ついには皇帝の耳に入って、宝玉は問責のため帰郷を命じられ、これを聞いた黛玉が潔白を証明するために死を決意する、という展開になっています。
「夢続紅楼」は「曹周本」より回は少ないのですが、逆に内容は凝縮されている感じでした。また、時に表れる女性らしい(というか少女らしい)描写が印象に残りました。
簡約の各回紹介と年表でおおよその内容はお分かりいただけるかと思いますが、いつの日か抄訳にも挑戦してみたいです(「意訳曹周本」が終わってからですね...)。
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