2008年4月アーカイブ

昨日、正式に新版紅楼夢のキャスト発表がされました。
宝玉役のオーディションで3強に残りながら、宝玉役が白紙に戻り、
配役未定のままになっていた徐垚さんは、今回柳湘蓮役に決定しました。

既に確定済だったキャスト
姚笛さん(黛玉役)
白冰さん(宝釵役)
周采芹さん(賈母役)
帰亜蕾さん(王夫人役)
王馥荔さん(邢夫人役)
葉琳琅さん(劉姥姥役)

今回新たに発表されたキャスト
李頡さん(焦大役)
龔麗君さん(薛姨媽役)
趙健さん(賈赦役)
賈妮さん(尤氏役)
姜彤さん(賈珍役)
徐垚さん(柳湘蓮役)

↓各人の写真や資料はこちらで見られます
http://ent.sina.com.cn/v/m/2008-04-28/16212006839.shtml

芦辺拓氏の「紅楼夢の殺人」が翻訳され、「紅楼夢殺人事件」として中国でも刊行され(書虫でも購入できます)、中国国内で賛否両論を巻き起こしているようです。この小説については既に読まれた方も多いと思いますが、大観園で巻き起こる連続殺人事件に対し、宝玉が探偵役としてその真相解明に挑む、という推理小説です。

反対意見としては、中国の至宝に対する冒涜だ。清浄な大観園に血生臭い殺人事件を持ち込むことは紅楼夢の思想に反するものだ。源氏物語をホラー物に改変すればいいものを!などというものです。
賛成意見としては、人物の性格づけや背景は原書に添っており、作者は中国文化を汚すつもりはない。外国人作家によって紅楼夢が「発揚」されたことは評価すべきだ、といったようなものです。
出版社では日本では殆ど知られていない紅楼夢を、日本人が好む推理小説という形で出した普及本のようなものだとも述べています。

これまでにも、フジテレビ系でドラマ化された西遊記が中国文化を侮辱しているとしてバッシングされたり、三国志や紅楼夢を題材としたと思われるアダルトゲームがネットで叩かれたりしていました(叩かれて当然ですが)が、これらについては、インターネットの普及により両国の距離が近づいたからこそ起こり得た問題とも言えるんですよね。

↓元ネタはこちら(中文)。ほかにもあちこちにあります
改编作《红楼梦杀人事件》表达敬意还是糟蹋名著
谈谈日本辱华小说《红楼梦杀人事件》

↓日本語で記事を読みたい方はこちらを
http://www.gesomoon.org/modules/weblogD3/details.php?blog_id=974

 「三国演義」「水滸伝」「西遊記」「金瓶梅」の四つの長編小説を「四大奇書」と定めたのは、明末の文学家・戯曲家の馮夢龍であるとされます。「奇書」とは「世に希なほど卓越した書物」の意味ですが、多分に商業上の理由(セットとして刊行できる等)から定着していったのではないかと思われます。

 清代に紅楼夢が成立すると、紅楼夢が金瓶梅に取って代わり(金瓶梅が中国で何度も発禁処分となったことも一因とされます)、現在の中国では「三国演義」「水滸伝」「西遊記」「紅楼夢」を「四大名著」とするのが一般的です(「四大奇書」は日本の受験生にとっては常識ですが、中国の方にはピンとこないのだとか)。
 なお、「中国四大古典小説」という呼び方も聞く(私も最初は紅楼夢を四大古典小説の一つと紹介していました)のですが、ネットで検索すると、シリーズ刊行されているものに冠されている以外にはあまり使われないようですね。

柳湘蓮は、自分が婚約を破棄した尤三姐の自刎を目の当たりにし、道士について出奔するという結末を迎えています(第66回)が、曹雪芹の原意では、第81回以降で再登場することになっていたとする説があります。

岩波文庫第8巻の解説で、松枝先生は次のように書いています。
第1回の「好了歌」の注釈に「たとえ厳しく教え導きたりとも、後日手に負えぬ子にならぬとは保しがたし」とある一句の脂評に「柳湘蓮ら一群の人を指す」とある。とすれば、湘蓮は後に緑林の徒になったのであろうか。
緑林の徒とは、山賊強盗を渡世とした輩(つまり盗賊・匪賊)のことです。

探佚学により柳湘蓮は出家後に緑林の徒となったものと推定したのは周汝昌氏(「紅楼夢新証」)であり、さらに梁帰智氏は、湘蓮は緑林の徒となったのち、尤三姐の仇に報いんとして、同じく尤二姐の仇に報いようとする張華と手を結んで煕鳳に復讐を果たすという独自の推論を展開しています(「紅楼夢懸案解説」より)。

しかし、太虚幻境に還った尤三姐と、道士に導かれて仙界に戻った柳湘蓮がついに結ばれるという結末がもっとも美しいことから、湘蓮の再登場はないとする考え方もあります(私もこの意見に賛成です)。

「曹周本」では、江南に向かう途中で窮地に陥る煕鳳と鴛鴦を湘蓮が救い、鴛鴦と結婚するという展開を見せましたが、さて「紅楼夢新補」ではどうなるのだろう?(まだまだ先でしょうが...)

(新版紅楼夢の監督を降板した)胡玫女史が指揮を執る映画版「紅楼夢」の正式発表があり、中国では誰が宝玉や黛玉を演ずるのか話題になっています。10月1日から撮影を開始し、来年初めには完了する予定とのことです。

元ネタ(人民網日本語版)↓
http://www.people.ne.jp/a/a2e3ed7b6ad741e390df2381d044a087

ストーリーや主演俳優などの情報は非公開とのことですが、人民網(中文)が伝えるところでは、宝玉役は女優の韓雪さんが男装して扮する(!)という不確かな情報もあるようです。
http://culture.people.com.cn/GB/22219/7122326.html

1997年以前 KASAHARAさん「紅楼夢の世界」(閉鎖)
1997年10月 若菜紫さん「排他的啓治板
1997年12月 平山「紅楼夢小辞典
1998年3月 hiroyoshiさん「葫蘆廟」(閉鎖)
1999年3月 松上廣さん「紅楼空間
1999年8月 ふみこさん「網上大観園」(停止)
2001年12月 ほーめいさん「宝玉くんのべんきょう部屋
2004年4月 嵐山晶さん「紅楼夢@
2005年5月 chococoさん「Yahoo!ブログ-紅楼夢-
2006年?  YUEさん「モダン・紅楼夢図鑑
(間違いがあれば御教唆ください)

パソコン通信の時代は存じませんが、インターネットで最初に登場した「紅楼夢」専用サイトはKASAHARAさんの「紅楼夢の世界」でした(諸所で紅楼夢第1号のサイトと紹介されていましたのでこれ以前に紅楼夢サイトが存在した可能性は低いです)。私がインターネットを始めた1997年4月には既に運用を開始しており、紅楼夢の書籍情報や雑感などを主に記載されており、掲示板も併設されていたので、よくお邪魔しては書き込みをさせていただいておりました。残念ながら1999年頃には閉鎖されてしまいました。

私がサイトの立上げ準備をしていた97年10月、若菜紫さんが「排他的啓治板」を開設されました。分かりやすいあらすじと可愛らしい人物イラストを中心に紅楼夢の紹介をされ、今なお有用なサイトです。あらすじ完了後は改編を予定されていたようですが、残念ながらその後紅楼夢に関する部分の更新は停止しているようです。

次いで97年12月に私が人物事典を中心とした「紅楼夢小辞典」を立ち上げます。当時は今のように自由な検索(ロボット検索)システムがまだなく、お目当てのサイトを見つけるにはYahoo!などにカテゴリ登録されたサイトから検索するか、各サイトのリンクを辿るしかなかったため、いろいろなサイトを紹介する本や雑誌が盛んに刊行され、拙頁も時折取り上げていただきました。

98年3月頃に開設されたhiroyoshiさんの「葫蘆廟」は、関連文献のデータベースである「紅樓夢研究日本語文献簡目」や、中国の紅迷たちのエピソードを紹介する「紅迷談藪」など独自の興味深いコンテンツを展開されておりました。残念ながら数年前に閉鎖されてしまったようです。

99年3月に松上廣さんが「紅楼空間」を開設され、御存知のとおり紅楼夢全般にわたって深い造詣を示されています。更新自体は6年前に停止されていますが、ほぼ完成された感のある紅楼夢サイトです。頁主もいまだ頻繁に利用させていただいています。

99年8月頃には、大学の卒論で紅楼夢を取り上げられたというふみこさんが「網上大観園」を開設されます。文献やグッズについて蘊蓄を語られていますが、数度更新されてそれきりになっています。

2001年12月には、弊頁にも多大なる情報をお寄せいただいていたほーめいさんが、満を持して「宝玉くんのべんきょう部屋」を開設されました。現在は「ゆる訳 紅楼夢補」の更新作業に苦労されているようですが、(私を含めて)楽しみにしているファンは多いですよ!

04年4月には、嵐山晶さんが「紅楼夢@」で十二釵などの美麗なイラストを紹介され、最近はブログ形式でグッズの紹介をされています。

05年5月には、chococoさんが初の紅楼夢専用ブログとなる「Yahoo!ブログ-紅楼夢-」を開設、あらすじ紹介を中心に頻繁に更新されていましたが、現在は小休止に入られたようです。

YUEさんの「モダン・紅楼夢図鑑」については、最近まで存じませんでしたm(__)m 友人たちの写真とCGで作成されたリアルな人物図鑑に度肝を抜かれました。

その他、unoさんは「アトリエ大熊猫」で人物イラストを紹介され、小魚さんは「古装劇場」で電視劇と栄国府について言及され、hungmeiさんはブログ「越劇・黄梅戯・紅楼夢」で書籍やグッズについて紹介されているのは御存知のことと思います。

「紅楼夢」は日本ではまだまだマニアックな存在ですが、その普及のためにはインターネットが最大の武器になると思っており、多くの方と一緒に盛り上げていければいいなと思っています。

book003先日書虫で購入した本ですが、2006年11月に出版されたようです。内容はもりだくさんで、紅学(版本、曹学)、人物、主要場面、詩の解説、用語解説などが図(絵画本、剪紙など)や写真をふんだんに使って掲載され、付録として「87版電視劇」から十二釵などの写真がのっています(ちなみに「人物図解」で使った陳暁旭さんの写真はこちらから採りました)。
全255Pで字が大きいので、各専門辞書に比べれば収録内容はずっと少ないのですが、その分コンパクトにまとめられていておすすめの一冊です。

なお、久々に書虫を使いましたが、注文画面で「中国から直送」を選ぶと、これまでより若干安く買えるようになりました(しかもカード払い可)。その分時間がかかるのかなとも思いましたが、これまでと数日と違わずに北京からの段ボール箱が届きました。

001だいぶ以前にほーめいさんからいただいたテレビドラマの写真本「大観園-電視劇《紅楼夢》画冊特輯」 に載っていた欧陽奮強さんの写真です。

ほーめいさんが「賈宝玉役の欧陽奮強さんは、いがぐり頭の兄ちゃんで笑えます。やっぱりかつらのせいなんでしょうね」と言われているとおり、扮装した宝玉とはかけ離れたイメージですね(^^)

新版紅楼夢での宝玉役が難航しているのも、ひとえに彼の宝玉役があまりにハマっていたためでしょう。13歳の張君鈺クンが子供時代の宝玉を演じる可能性が高いのではないかと言われていますが、彼も確かに欧陽奮強さんに似ています。
ちなみに張君鈺クンも欧陽奮強さんと同じ四川省出身とのこと。

日本紅学史稿

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book002去年の訪中時に、北京図書大厦で購入したものです。
著者は孫玉明氏で、2006年11月に北京図書出版社から出版されたものだそうです。
日本における紅楼夢の伝来から近年の研究状況まで、時代を追いながら実に丹念に描かれています。
また、付録として「日本《紅楼夢》研究論著目録」と「《紅楼夢》日文訳本一覧表」が掲載されています。
私のサイトで日本の紅学について紹介した際に、伊藤漱平先生の著書ともども参考にさせていただきました。
個人的には大高巌氏や松枝茂夫先生、伊藤先生の写真が収録されていたのがお気に入り(^^)

ちなみに
中国の大きな書店では、古典文学のコーナーとは別に「紅学」のコーナーがあって、紅学家の方々の専著がずらりと並んでいるのが嬉しいかぎりです。
ちょうど劉心武氏の「劉心武掲秘紅楼夢」の第三部が刊行された後でしたので(ベストセラー書にも並んでいました)、第一、二部ともども平積みになって売られていました。

元ネタはこちら↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080329-00000010-rcdc-cn

記事によれば、かつて中国の中学生にとって四大名著は必読書でしたが、
最近の調査では、「全部読んだことがある」学生はわずか27.7%にとどまった
とのことです。
残念ながら紅楼夢を「読んだことがある」割合は、四大名著の中では最も低く、
男女比では29.5%、50.3%と、女子の割合が高くなったそうです。
今の中国の子って紅楼夢読まないの? ちょっと意外でした。

新版紅楼夢については、昨年10月に監督が胡玫女史から李小紅女史に代わるなど、紆余曲折が続いていました。現在も全てのキャスティングが発表されておらず(宝玉役はなおも難産が続いています)、クランクインの日時も、延期に次ぐ延期により、再び未定となりました。

黛玉・宝釵役については昨年6月のオーディションのあともかなりの変動があり、最終的に黛玉役に姚笛さん、宝釵役に白冰さんが決定していました。この2~3月にかけて配役の一部が発表され、周采芹さん(賈母役)、帰亜蕾さん(王夫人役)、葉琳琅さん(劉姥姥役)、王馥荔さん(邢夫人役)となっています。

↓くわしくはこちらで(中文です)
http://ent.sina.com.cn/f/v/hongloumeng/index.shtml

私版・紅楼夢

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book001.jpg先日、古本屋のネットを利用して飯塚朗先生の集英社版世界文学全集「紅楼夢」全3巻と「私版・紅楼夢」を購入しました。

このうち、「私版・紅楼夢」は、飯塚先生が昭和23年に大阪国際新聞に執筆されたもので、30年以上たった昭和57年になって刊行されたものです。残念ながら現在は入手が難しくなっています。

宝・黛・釵の恋愛模様を中心に紅楼夢のあらすじをなぞっているのですが、細部や人物描写、後半の展開などは原作と大きく異なる点が多く、かなり面食らう部分が多かったです。

例えば、賈赦が妾に求めるのが鴛鴦でなくて襲人だったり、晴雯が王夫人に食ってかかったり、薛蟠が宝玉や宝釵を諭したり、香菱が賈蓉と駆け落ちしたり、とどめに賈雨村が実は曹雪芹だったりといった感じです。

10年前にホームページを作り始めた頃は、サイト上で中国語の漢字(例えば女、李、晴)をweb上で表記することができず、カタカナで書いたり(女カ、李ガン、晴ブン)、漢字を組み合わせたり(女咼、糸丸、雨+文)、画像を作成して表記したりしていました。

これが中国関連のサイトを持っている者には悩みのタネで、お互いに相談などをしていました。

現在はUnicode(ユニコード)という文字コードを使うことで、日本語も中国語も含めて多言語を自在に表記できるようになり、すっかり解決された感があるのですが、実は紅楼夢の人物の中で一人だけ未だにweb上で表記できない人物がいます。

それが賈家の親族の賈ヒンで、ヒンは(王+扁)という字です。表記できない理由は、この漢字が未だに中国語の文字コードにも入っていないためです。

私のサイトでも賈ヒンだけは未だに画像で表記しています。

先月「朝日コム」に載っていた記事です。

http://www.asahi.com/international/weekly-asia/TKY200802260119.html

電視劇「紅楼夢」で黛玉役を演じた陳暁旭さんが昨年急逝されたことは記憶に新しいですが、彼女は中国医学を信じて西洋医学による治療を拒み、結果として命を落としました。これに対して、ネット上では中医学(中国医学)に対する批判と擁護論が巻き起こっている、というものです。

ブログを使っている方にとっては常識でしょうが、私を含めて(^^;ビギナーの方のために書いておきます。いずれも認証登録や私の承認は不要としています(万が一荒らしがあれば考えますが)ので、ご自由にお使い下さい

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紅楼夢小辞典」頁主の平山です。
最近久方ぶりにサイトの更新を続けていたわけですが、こんな時は紅楼夢についていろいろ考えることもありながら、私のサイトにはそれをつらつら書きつらねる場所がありませんでした。

掲示板に書けば?と思われるかもしれませんが、掲示板は皆さんとの交流の場であって、頁主が自己主張する場ではないというのが私の(勝手な)認識です。ほーめいさんのサイト「宝哥哥的書房」の「宝玉くんのくずかごの底」のように、それ用のページを作ってもいいわけですが、せっかくなのでブログに手を出してみました。

あくまでも「紅楼夢小辞典」の一部という位置づけであり、書きたい時に書くという気ままなスタンスになると思いますが、よろしくお願いします。

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